昭恵夫人と面識がある国会議員は、彼女の口からこんな言葉を聞いている。
「夫は動ける範囲が決まっているので、私が代わりに動き、見聞きしたことを伝える必要がある」
まさに総理夫人のカガミ、立派な志を抱いているかのようだ。しかし、籠池氏のケースなど氷山の一角だった。「総理夫人」を利用するために接近してくる人間たちを排除することなど毛頭考えになかったようだ──。
舞台は、第一次安倍内閣退陣後の08年に発足した、山口県出身者で占められる後援会「長州友の会」。昭恵夫人が運営委員を務め、安倍総理も幾度となく講演に訪れている。
「定期的に勉強会を行っているんですが、外国人の詐欺師がどういう手を使ったのか、売り込みをかけて講師として潜り込んだんです。彼は映画監督としての顔も持っていて、広島の原爆を題材にしたドキュメンタリー映画を製作するなどしていたのですが、口のうまさもあって、夫人は簡単に共鳴してすっかり取り込まれた。勉強会の人選は夫人の意向が反映されやすく、事あるごとに上映会を開いては、彼の活動のための募金箱を設置して参加者から集金していました。夫人があまりにも熱心にイレ込むので、信用して一度に10万円も募金した人間がいたほどです」(地元有力者)
詐欺師と名指しされたのは、40代の米国人平和活動家、マット・テイラー氏だ。08年、車中で練炭自殺した元・TBSアナウンサーの川田亜子さん(享年29)の最後の恋人として注目を集め、「(彼女は)自殺未遂を何度も繰り返していた」などと幾度もメディアで喧伝した過去もある。募金はマット氏が代表を務めるNPO団体「GNDF(世界核兵器解体基金)」の活動資金になったという。
「しかし、今日に至るまで核の一つも解体していません。団体立ち上げ当初こそ内閣府の認証があったものの、現在は活動実績がないため取り消されている団体です。こうした高尚な目的を立て、募金を集める手法はマット氏の十八番。有名なものだと、98年に『タイタニック引き上げ品展』を実施したものの、イベント運営費を払わず収益をネコババした過去もあります」(NPO関係者)
はたして昭恵夫人は、こうした過去を調べていたのだろうか。その後、まるで「昭恵夫人からお墨付きをもらった」と言わんばかりに活動を活性化させたマット氏は、日本各地で映画の上映会を開催している。
「その裏で、夫人を筆頭とした有力者の名前を支援者として出すことで、多額の出資金を得ていました。しかし、実態がない以上、常にトラブルの火種を抱えていたんです」(前出・NPO関係者)
被害にあった一人に、大手芸能事務所幹部のA氏がいた。
A氏は核兵器を解体する瞬間を映像に撮らせるという条件で1000万円を出資している。ところが、出資詐欺の実態を知り、返金を求めると、逆に活動妨害で訴えられたのだ。反訴した結果、マット氏の詐欺行為が認定され、返金命令が下されている。
A氏に取材を申し込んだが、
「もう巻き込まれたくないので、話すことはありません」
との回答しか得られなかった。それでも取材を進めると、実はA氏とマット氏の対立軸に昭恵夫人が絡んでいたのである。
いくら待ってもマット氏からの返金がない事態に耐えかねたA氏は13年10月、動産執行に踏み切った。
当時、マット氏はミス・インターナショナルの吉松育美(29)と交際し、彼女の自宅に寄生。そのため執行官は吉松の自宅に調査に入った。
結果、13年12月、外国特派員協会で記者会見を開いた吉松は、ストーカー被害でA氏を訴えたのだが、すぐさま彼女の支援に名乗り出てきたのが昭恵夫人だったのだ。
当時、昭恵夫人はこの年のミス・インターナショナルの審査員を務めており、フェイスブックにその模様をアップした。
すると、吉松の苦境が複数の利用者から知らされ、後ろ盾になるために近しくなった──このことを当時、昭恵夫人は週刊誌上での彼女との対談で語っている。
「昭恵さんに吉松を紹介したのがマットです。マットへの心酔からか、彼女はすぐにA氏をストーカーと断定しました。自分のフェイスブックで〈全ての女性のために吉松さんと力を合わせていきたいと思います〉と、ファーストレディの立場で全面支援を表明したほどです」(A氏とは別の芸能プロ幹部)