秋競馬は中山、阪神から。その中山での開幕週のメインは、京成杯AH。芝マイルのハンデ戦だ。
中山のマイル戦は、周知のとおり、2コーナーのポケットにスタート地点がある。スタートを切って加速がつくところで急に折れる最初のコーナーがある、“おむすび状”のトリッキーなコース形態。
よって、多頭数になればなるほど、外枠を引いた馬はハジかれたり膨れたりして、コースロスを強いられやすい。だから、真ん中より内めの枠に入った馬に、よりチャンスが転がり込むという寸法だ。
今回はフルゲート(16頭)になりそうで、枠順による泣き笑いがあるのではないか。
それはともかく、顔ぶれは多彩だ。サマーマイルシリーズのトップ獲りを狙うマルターズアポジーが最右翼と見られるが、前走の関屋記念同様、マイペースで単騎逃げを打てるか、どうか。そのへんがレースのポイントになるが、不利な外枠を引くようだと、ハンデ頭(58キロか)になるだけに苦戦を強いられそうだ。
では、データをひもといてみよう。
馬単が導入された02年以降、これまでの15年間、その馬単での万馬券は5回(馬連4回)。平均すると中穴傾向の重賞だが、それでいて1番人気馬はわずか2勝(2着0回)、2番人気馬は7勝(2着2回)。一筋縄では収まりにくい重賞であることが知れよう。
年齢的には、充実著しい5歳馬が7勝(2着6回)と他を圧倒しており、続いて4歳、3歳と若い上り調子の馬の活躍が目立つ。このことは頭に入れておくべきだろう。
いずれにせよハンデ戦であり、枠順による明暗も少なからずあるため、難解なレースであることは確かだ。
悩むところだが、最も狙ってみたいのは、オールザゴーである。
関屋記念の際も当欄でイチオシしたが、直線に向くや失速。いいところなく敗れ去った。
「多少、折り合いを欠いていたが、勝負どころで他馬に寄られたり接触したりで戦意を喪失してしまった」
とは、厩舎関係者の敗戦の弁だが、それでも勝ったマルターズアポジーとは6馬身ちょい遅れたのみ。まだまだ挽回は十分可能だ。
実際、この中間の状態はかなりいい。稽古の動きが素軽くなっており、1週前の追い切りも文句なしだった。休み明けを一度使われたことでガス抜きができたと見ていいのではないか。
「落ち着きが出て、雰囲気がよくなった」と、厩舎スタッフは口をそろえて状態アップを強調する。ならば変わり身を見込んでいいのではないか。
前走の関屋記念は53キロでの競馬。それを考えるとハンデは恐らく52キロまでだろう。本来は好位にスッとつけられ、立ち回りが上手な馬。中山のマイル戦は脚質から間違いなく合っているはずだ。
母も祖母も重賞勝ち馬で、一族にエキサイティングストーリー(GIメトロポリタンH)、ディアブロズストーリー(GIナタルマS)など活躍馬が多くいる血筋。好枠を引くこと、そして良馬場条件に、大きく狙ってみたい。
阪神のセントウルSも混戦模様。それでも最も期待を寄せてみたいのは、ミッキーラブソングだ。
前走の北九州記念は6カ月ぶりの実戦。体に余裕があったし、外枠を引いたことからスムーズさを欠いて流れに乗れなかった。14着と着順は悪かったが、勝ち馬との差はコンマ5秒。一叩きされて状態は大幅良化している。
以前はもう少し距離が長いほうがいい印象だったが、今はこの6ハロン戦がベスト。阪神は相性がよく、“一発”があっていい。