天皇賞・秋の顔ぶれは、すこぶるつきの豪華メンバー。GI勝ち馬が半数近い8頭。見応え満点の競馬になること請け合いで、馬券的にも実におもしろい。
宝塚記念で思わぬ大敗を喫したキタサンブラックを筆頭としたそのGI馬は、どれもここを目標にしっかりと調整されており、まずは力を出せる状態に仕上がっているようだ。それだけに、馬券的にも食指が動くGIと言っていいが、ハイレベルの争いだけに難解な一戦でもある。
このGIは、02年から馬単が売られたが、それ以降これまでの15年間、その馬単で万馬券になったのは5回(馬連2回)。1番人気馬は7勝(2着3回)、2番人気馬は勝ち鞍がなく(2着4回)、1、2番人気のワンツーは、わずか1回のみ。大きく荒れることが少ない反面、順当に堅く収まることも少なく、いわば中穴傾向のGIと言っていいだろう。
ただ、サラブレッドが古馬になって充実期を迎えるのが、この秋。特に4、5歳馬の強さは圧倒的だ。過去15年間で4歳馬が7勝(2着6回)、5歳馬は6勝(2着5回)と、まずはこの世代を無視して馬券を的中させることは難しいだろう。
それと牝馬の活躍も目立つ。ヘヴンリーロマンス、ウオッカ、ブエナビスタなどがそれだが、今年はソウルスターリングで、この馬の動向から目を離せまい。
いずれにせよ、どんな競馬が見られるのかワクワクするばかりだが、もう一つ頭に入れておいてもらいたいのは、フルゲート(18頭)必至とあって、枠順による有利、不利だ。
中山のマイル戦ほどではないにせよ、東京の2000メートル戦も多頭数になるほど外枠の馬は競馬をしづらくなる。2コーナーのポケットがスタート地点で、スタート後、加速するところで急に折れる最初のコーナーを迎える。そのため、スムーズに曲がれない馬がいると、外枠の馬はそのアオリを被りやすいのだ。だからどうしても内枠を引いた馬がスムーズな競馬をしやすく、よって馬券にも絡むというわけだ。
ただ、今は枠順発表前なので、枠順については要注意ということだけで、気にしていても始まるまい。
さて本題に入ろう。最も期待を寄せてみたいのは、ミッキーロケットだ。
前走の京都大賞典は4着に敗れたが、3カ月半ぶりの実戦だったことを思えばやむをえまいか。
「春の疲れが取れて馬体は戻っていたが、まだ少々緩かったかな」
こう振り返る音無調教師は、続けて「使われて一変。実にいい雰囲気で、これまでにない状態で臨めそう」と、充実ぶりを強調、期待感をあらわにした。
走りっぷりや、過去の実戦から判断して、2000メートル前後の距離がベストと判断できる馬。器用さも備えており、初めての東京もまったく問題あるまい。
ランドシーア(仏2000ギニーなどGI2勝)ほか、一族に活躍馬が多い良血。そして、このGIに強い充実著しい4歳馬。期待しないわけにはいかないだろう。
逆転候補としてあげたいのは、サクラアンプルールだ。「春のデキにない。本当によくなるのはこの次」(金成師)だった前走の札幌記念の快勝には正直驚いたが、この気持ちは厩舎スタッフも同じ。6歳とはいえ、いかに充実しているかの証拠だろう。
前走後、ここ一本に備えたのも好感が持て、中間の動き、気配からして、デキは前走以上。チャンスがあっていい。
穴は、レインボーライン。夏場に使うプランもあったが、成長を促す意味でここまで待機させたのは正解。気がいいタイプで鉄砲駆けが利く馬。“一発”があっていい。