北朝鮮の弾道ミサイルに警戒する一方、新たな脅威もまた日本に押し寄せてきた。日本海沿岸には北朝鮮からと見られる木造船が相次いで「侵入」しているのだ。
11月29日に北海道松前町沖で、海上保安本部は漂流中のイカ釣り漁船らしき船を発見。乗組員男性10名が乗っていた。その後、松前小島では小屋に置いていたバイクや家電製品がなくなっていたことが発覚し、窃盗容疑の疑いで乗組員が逮捕された。秋田、山形、新潟の沿岸でも木造船の漂着が確認され、複数の遺体も見つかった。北朝鮮の内部事情に詳しい作家の北一策氏はこう説明する。
「漂着した木造船の多くは日本側の漁場で不法操業していたと見られています。北朝鮮は食料不足を解消するため、国策として冬の漁を奨励。政府は厳冬の海で漁をすることを『冬季漁獲戦闘』と呼びかけ、『年間300日出漁』という過酷な労働を求めた。そのうえ、船が老朽化していて、10月末に吹いた木枯らしで荒れた海に流され、遭難が相次いでいるのです」
これまで海産物は外貨獲得資源として重宝されていたが、8月に国連安全保障理事会の「経済制裁」で全面禁輸となっている。中国税関総署の発表では、10月の対中国輸出額は前年同月比62%減の9000万ドル(約98億円)で大幅なマイナスが明らかになったのだが‥‥。
「それでも国民に豊富な海産物が届けば、不安を抱かせることはありません。日本海で獲れるイカはタンパク源としても期待され、北朝鮮政府は漁師に大号令をかけたのです」(韓国在住ジャーナリスト)
こうした北朝鮮からの「大量漂着」漁船で日本国内には懸念が広がっている。11月30日の参院予算委員会で自民党の青山繁晴参院議員(65)は、
「北朝鮮は兵器化した天然痘ウイルスを持っている。もし上陸者に一人でも感染させられた人がいたら、ワクチンを投与しないと無限に広がっていく」
と述べて、「天然痘テロ」を警戒した。続々と漂流する木造船を好機とばかりに、北朝鮮から「次なる危険」が近づいていると、前出の北氏も警鐘を鳴らす。
「日本海沿岸に木造船が転覆した状態で打ち上げられていたケースもあり、北朝鮮の工作員やスパイにとって、オンボロの木造船なら上陸しやすい状況であることがわかった。漂着した中には、船の大きさに比べて乗組員が少なすぎる木造船もあり、他に乗っていた乗組員がいるならば、その行方を捜す手段はありません。また、一部の漁師には、皮膚感覚で金正恩政権の危機を感じて、日本への脱北を試みている可能性も捨てきれないのです」
北朝鮮の脅威は「空」だけではなく、「海」からも押し寄せつつある。さらなる警戒が必要な危機が到来しているのかもしれない。