加えて、実力もここにきて一気に開花している。昨年10月21日、得意の新潟の直線競馬で記念すべき年間12勝目をあげた。同時に初のメインレース優勝だったが、この直後に不測の事態に見舞われる。
11月末になって、突然のエージェント(騎乗仲介者)変更が行われたのだ。あまりにも急な出来事で、トレセン内でも話題になったという。スポーツ紙記者が解説する。
「どうも菜七子ちゃんとエージェントが、根本(康広)先生に騎乗依頼が来ていることを報告していなかったからのようです。通常、フリーの若手や中堅騎手は休みの月曜日や追い切り後、騎乗馬の確保のために近くの牧場の乗り運動を手伝いに行く。いわゆる、パイプ作りであり、営業の一環です。厩舎に所属する菜七子ちゃんもまた、少しでも馬に接していたいために、休みがあれば積極的に行動していた。当然、『今度、(レースで)乗ってみる?』なんて声をかけられるケースがあり、それを根本先生に報告し忘れていたようです」
根本厩舎に所属する以上、基本的には管理馬が優先となるのは言うまでもない。前出・スポーツ紙記者が続ける。
「先生から見れば、『俺、聞いてないよ』『お前ら2人して、なんで黙ってたの?』ってことで、怒り心頭も当然な話です。もし、ダブルブッキングのようなトラブルになっていれば、根本先生の信用問題に発展しかねませんからね」
ただ、周囲からはエージェントを気遣う声も聞かれるのだ。馬主関係者が話す。
「柴田大知騎手などと契約し、マイネル軍団ラインに強いエージェントだが、菜七子ちゃんのイベントなどがあれば、休日でもわざわざ同行していたからね。それこそ、芸能界のマネージャーのように、いわゆる“剥がし屋”もしていた。サインや握手を求めるファンを整理し、時にはその間に割って入ってガードしたり。そんな人情派のエージェントがいきなり交代となれば、菜七子ちゃんも心苦しかったんじゃないかな」
また、こんな同情の声も寄せられている。
「昨年8月12日、13日の菜七子ちゃんの騎乗自粛騒動。2日にトレセン内で開かれた夏祭りイベントのあと、彼女は同期の菊沢一樹騎手と木幡巧也騎手と食事し、カラオケに行った。そこで未成年の菊沢が飲酒し、1カ月の騎乗停止処分。同席していた2人も止めなかったことで騎乗自粛となったが、この時、彼女はドタキャンした騎乗馬の関係各所全てに謝罪して回った。『もらい事故だな。頑張って』なんて優しい言葉をかけられると、思わず大粒の涙を流したもので、それが縁で騎乗馬も増えた。根本先生の人柄と尽力もあったが、エージェントのフォローも大きかった。夏場以降のローカルでの固め打ちは災い転じて福となすって感じだった」(スポーツ紙デスク)
とはいえ、新しいエージェントの評判もよく、今年はさらに飛躍しそうだ。
「戸崎圭太騎手と内田博幸騎手を担当している敏腕エージェントです。急に社台系の馬に乗るようになったのも、彼の采配によるものでしょう。自身も、地方競馬の騎手出身だけあり、間違いなく菜七子ちゃんのプラスになりますよ。先日、話を聞きに行くと、『いつまで担当するかはわからないけど、やってるかぎりは全力で教えますよ。乗り方とか、トレーニングについては、すでにメチャクチャ指導してる』って(笑)」(専門紙記者)
一大帝国を築く社台の触手で、勝ち鞍が増えるのは確実。周囲にも一流のスタッフを配置して、いよいよその真価を発揮する一年となりそうなのだ。
そうしたエージェントの交替によって、意識も大きく変化しつつある。最近は体幹トレを重視するようになっているという。厩舎関係者が解説する。
「彼女は競馬学校時代から男子と同じような筋トレのメニューを渡されていたそうで、『筋トレが大嫌い』と公言してます。でも今は体幹トレに変えたようで、騎乗ぶりも安定してくるんじゃないでしょうか」
今年は北海道遠征の話が聞こえてくるぐらいで、まさに菜七子デーの年になりそうだ。