この一件を巡っては、山尾氏の幹事長就任が内定していたことから、嫉妬による民進党の内部リーク説も流れたが、野党議員の見立ては違っており、
「当時、官邸と自民党が情報をつかんでいたのは事実。それだけに、山尾氏は刺されたのではないかとの疑念が消えない。情けない話だが、野党議員の間には今、できれば予算委員会の質問には立ちたくない、立ったとしてもスタンドプレーは避けなければ、との警戒心が広がっている。叩かれてホコリの出ない議員なんかいないからね」
ならば、この議員が口にし、多くの野党議員が恐れおののく自民党の諜報活動、諜報機関とはいかなるものなのか。
「諜報機関として正式な独立組織があるわけではないが、諜報活動を任の一つとしている機関が存在しているのは事実。ズバリ、自民党本部内に組織されている『選挙対策本部』だ」
こう明かすのは、東京・永田町の自民党本部に籍を置く、古参の幹部職員だ。
現在、選対本部の役員には、本部長を務める安倍総理をはじめ、本部長代行の高村正彦氏(75)、本部長代理の二階氏、副本部長の竹下亘氏(71)、筆頭選対副委員長の萩生田光一氏(54)など、いずれも錚々たるクセ者が顔を並べている。古参職員が続ける。
「ただし、実際に諜報活動の指揮を執るのは選対本部の事務局長、事務局次長などを務める幹部職員。そして諜報活動が最も盛んになるのが、国政選挙や地方選挙を控えた選挙前の一定期間で、この時期には事務局長らが自民党の各県連、都連、府連、道連に情報収集の指示を出したり、場合によっては事務局長らがみずから各県連、府連、道連に赴いて情報収集の任に当たったりする。その調査能力はマスコミ以上だよ」
この古参職員によれば、その際、調査の主たる標的となるのが、自民候補の敵に当たる対立候補だという。しかも、情報収集もカネ、女(対立候補が女性の場合は男)に始まり、過去を含めた素行、地元でのトラブル、さらには起訴に至らなかった逮捕歴など、「何でもござれ」の広範囲にわたっているのだ。
選対本部の役員経験もある自民党の有力議員も、次のように打ち明ける。
「このようにして集められた索敵情報は、選対本部で保管、管理される。一部はネガティブ情報として表に出ることもあるが、多くの場合、情報を握っていること自体が大きな威力を発揮することになる。ここぞという時に本人にしかわからない形で情報が流れれば、野党の議員センセイたちは縮み上がって何もできなくなる、というわけだ」
さらに言えば、この選対本部のほか、時に応じて個別の「実働部隊」が編成されることもある。例えば、民主党に政権を奪われ、下野した自民党の非常時に実働部隊長として活躍した、西田昌司参院議員(59)だ。