怒濤のごとく続いたGI戦は、今週をもってひと息。その安田記念は、伝統を誇る府中のマイル戦だ。
毎度のことだが、顔ぶれがいい。昨年と同じくフルゲート(18頭)が見込まれるが、外国(香港)馬の参戦もあり、馬券的にも興味が尽きない。
古豪レッドファルクスを筆頭として、大阪杯を制したあと満を持していたスワーヴリチャード、ドバイ遠征帰りのリアルスティールといったところが人気を集めると思われるが、スワーヴリチャードは、初めてのマイル挑戦であり、リアルスティールもマイラーというイメージが湧かない。一方のレッドファルクスは、昨年の安田記念で3着惜敗だったが、GIスプリンターズSを連覇中とあって、マイル戦は微妙に長い印象もある。
ということで、一筋縄では収まりそうにない一戦になると見ていいか。
実際、力量馬が集いながら荒れる傾向にある。このGIに馬単が導入されてからの過去15年間、その馬単で万馬券になったのが実に9回(馬連では7回)。この間、1番人気馬は4勝(2着2回)、2番人気馬が3勝(2着0回)で、1、2番人気馬でのワンツー決着はわずか1回のみ。つまり、データからは穴党向きのGI戦ということになる。
さて、今年はどうだろうか。前記したように、人気どころに純然たるマイラーではない馬が何頭かいて、確かに難解な一戦と言っていい。そこでもう少しデータを掘り下げてみると、おもしろいことに古豪の頑張りが見て取れた。
最も充実しているはずの5歳馬が過去15年間で3勝(2着5回)だったのに対して、6歳馬が実に8勝(2着2回)、7歳馬も1勝(2着4回)している。今年は6歳以上の古馬が7頭登録しており、出走頭数を考えると、ピークを過ぎていると捉えるのは禁物のようだ。
今年も3歳馬から7歳馬まで年齢幅は大きい。前走時より背負う斤量が増えて出走する馬が多くいて、その斤量(3歳54キロ、4歳以上58キロ、牝馬は2キロ減)もポイントになるだろう。
最も狙ってみたいのは、タワーオブロンドンだ。
ただ1頭の3歳馬。この時期はまだ古馬との地力に歴然たる差があるが、それでも斤量で古馬と4キロの開きがあれば、互角に渡り合っていい。実際、過去には当時3歳だったリアルインパクト(11年)が9番人気をはねのけて勝利をモノにしている。というわけで、穴党としては大いに期待したいわけだ。
前走のNHKマイルCでは1番人気に支持されるも、12着に惨敗。ただ、これで評価が下がっているようなら好都合である。
その前走は、スタートでつまずいて後手に回ったのが、まずいけなかった。リズムに乗れないまま直線に入ったが、そこでまたもまれて、他馬と接触するなど大きな不利を被ってしまった。このレースは参考外にしていいわけで、それでも勝ち馬との差が5馬身ちょいだったことを思うと、十分に挽回は可能だ。
「前走後、すぐにもここを目標にした。疲れはまったくなかったし、いい感じに仕上がった。難しいところがなく、素直な馬。古馬相手で楽ではないが、あらためて期待したいね」
こう言ってヤル気のほどをうかがわせるのは藤沢調教師。1週前の追い切りも軽快そのもので、状態はかなりよさそうだ。
であれば、チャンスがあって不思議はない。
強烈な末脚が武器で、直線の長い東京は間違いなく合っている。英、愛ダービーを制するなどGI4勝のジェネラスをはじめ近親、一族に活躍馬がキラ星のごとくいる良血。大きく狙ってみたい。