今年のプロ野球ドラフト会議まであと数日と迫ってきた。注目は、この夏最大のブレイクを果たした“平成最後の怪物”こと夏の甲子園準V投手・金足農(秋田)の吉田輝星である。
上背は176センチとさほど高くはないが、自慢の右腕から放たれる直球は、夏の甲子園終了後に行われた福井国体で自己最速の152キロを記録。さらに曲がり幅が違う2種類のツーシームなど8つの変化球を自在に操る。けん制やフィールディング、クイックなど投手に必要なスキルを完備し、すでに高いレベルで完成されていると言える。
夏の甲子園決勝戦こそ大阪桐蔭の猛打の前に屈したものの、6試合で計50回を投げ、1大会における夏の甲子園通算奪三振歴代6位となる62三振を奪い、第100回の夏を沸かせたスター性は見逃せない。吉田本人は巨人ファンを公言しているが、当の巨人はここにきて競合必至との声も高い大阪桐蔭の根尾昴内野手の1位指名が濃厚な情勢で、はたしてどうなるか。吉田については、「素晴らしい投手。普通では投げられない、浮き上がるような直球で、阪神の藤川のような球質」と、橿渕聡スカウトグループデスクが高評価する東京ヤクルトのまさかの一本釣りがあるかもしれない。
一方、名前のあがった根尾は、内野手としての評価が非常に高く、早々と1位指名を公言した中日を筆頭に複数球団の1位指名が濃厚な状況だ。今年春の選抜優勝投手でもあるように、MAX150キロを誇る本格派右腕の“二刀流”という話題性も抜群。夏の甲子園では2試合で13回を投げ、被安打12、13奪三振を記録している。
この根尾のチームメイトで、大阪桐蔭のエースナンバー1を背負って今夏の甲子園優勝投手となった柿木蓮は、181センチの上背から威力ある直球を投げる本格派右腕。今年の春夏の甲子園で計5勝をマーク。さらに夏の甲子園2回戦でMAX151キロを計測するなど、秘めたポテンシャルの高さは注目に値する。ドラ1とまでは行かないまでも上位指名必至の逸材である。
右腕ではほかに浦和学院(埼玉)ベスト8進出の立役者となった渡邉勇太朗。190センチの恵まれた長身から投げ下ろすMAX149キロの直球とスライダーを武器に3試合で21回1/3を投げ、22奪三振をマークした。その潜在能力をプロのスカウトたちは高く評価している。
左腕では山梨学院の垣越建伸と創成館(長崎)の川原隆という夏の甲子園初戦敗退組。身長183センチの垣越は最速146キロという力のある直球にスライダーを交えた投球が特徴的な大型左腕。今夏の県予選では4試合で計15回を投げ、26奪三振を記録した。かたや川原はMAX141キロの伸びのある直球とスライダーを武器に今春の選抜ではベスト8入り。昨年秋の明治神宮大会では準決勝の大阪桐蔭戦で4回2/3を投げ、被安打3、5奪三振の無失点救援でチームの勝利に貢献。ドラフトではソフトバンクの指名に期待がかかる。
(高校野球評論家・上杉純也)