後半戦スタートの4番に長野を抜擢するあたりは、今年だけでなく、その先をにらんでいるとも感じます。長年、チームの顔だった阿部は年齢面を考えると来年、再来年も主軸を張れる保証はありません。将来、生え抜きで4番を張れる選手を探した場合、長野しかいなかったのでしょう。今はまだ荷が重くても立場を自覚させ、4番として成長させようという狙いがあるはずです。
他球団からすると、巨人がどっしりと構えて戦う形ができると、つけいる隙がなくなります。だから「形」がなく、采配面でも動きすぎている間に叩いておく必要があるのです。その対抗1番手となるのが阪神です。7月は勝ち運にも恵まれ、投打の歯車がかみ合い、一気に貯金を増やしました。前半戦を終えた時点での巨人とのゲーム差は3.5。甲子園での後半戦開幕の3連戦でも勝ち越しに成功し、ファンも05年以来、9年ぶりのリーグ優勝へヒートアップしています。
しかし、阪神にとっては本当の勝負はここからです。打線の鍵を握る1、2番の上本、大和は経験が浅く、夏場を乗り切れるかどうか。4番のゴメスも来日1年目だし、正捕手の座をつかみつつあるルーキーの梅野もプロの厳しさを味わうのはこれからです。ジョーカー的な存在となる西岡も体調を崩し、再び登録を抹消されたことも大きなマイナス要素です。
何度も言いますが、6連戦が続く8月からの戦いこそ、チームとして本当の力が試されるのです。考えてみれば昨季も前半戦を折り返した時点では、首位・巨人と2.5ゲーム差の2位でした。終わってみれば、12.5ゲームもの差をつけられ、前半戦5位から巻き返した広島に2位の座も脅かされたのです。今年は昨季の失敗を糧に打倒巨人を果たさないといけません。
広島、中日もまだまだチャンスはあります。広島はエース前田の離脱もあり、交流戦では投打の歯車が狂いましたが、もともとバランスのいいチームです。前田がフル回転し、4番のエルドレッドが今のペースでホームランを打ち続ければ、自然と貯金は増えるはずです。センターラインの二塁・菊池、中堅・丸は攻守にハツラツとしていますし、優勝を狙うだけの力は備えています。
中日の後半戦の戦い方というのも、優勝争いを左右するポイントとなります。優勝を諦め、2位狙いに切り替えてきた時に、巨人を追う立場の阪神、広島はやりづらくなるのです。エースの吉見が復帰し、投手陣は整備されつつあります。打線の得点源の2人、ルナ、大島が前半戦の最後に故障しましたが、彼らが本来の力を発揮すれば、チーム力は相当高いものを持っています。何よりも百戦錬磨の谷繁のリードは、終盤の大一番でこそ力を発揮するはずです。
前半戦は出遅れたDeNA、ヤクルトも上位進出をあきらめていません。どのチームもここからの1カ月半ほどが正念場です。目が離せない熱い戦いに注目しましょう。
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