「あの時はほんと、辛かった」
そう話すのは以前、大都市のテレビ局で女子アナとして働き、現在は田舎町で暮らす真世(仮名)だ。女子アナを辞めるきっかけは意外にも、同期の存在だった。
真世はマイペースな性格で、報道など地味な仕事をコツコツこなすのが得意だった。
「最初は朝の情報番組を担当して、次は夕方の報道番組。まぁ、順調にスキルアップできていたかな、という感じで日々を過ごしていました」
プライベートでは社内のイケメンディレクターに見初められ、結婚前提の交際がスタート。公私共に充実していたが、その横をジェットコースターのようなスピードで追い抜き去る人物がいた。同期の女子アナ、愛子(仮名)だった。
「超大物芸人に可愛がられ、元アスリート系司会者にもしっかり食い込める逸材。それでいてフランクな性格だから、自分から行かなくても人が寄ってくる子でした。そんな彼女と自分を比べてしまったのが、そもそもの間違い。途中からは『私ってなんでこんなに仕事ができないの…』と悩むようになり、結婚して心機一転を図ろうと思いましたが、それもかなわず。精神的に参ってしまい、春を迎えそうなある日に退社を決意しました。今は別居婚生活で、私は実家に帰りました」
愛子は少し前に全国区の大きな仕事を得て、さらに羽ばたこうとしている。
「愛子はずっと愛子。凄いキャラクターは、絶対に変わらないでしょう。鋼のメンタルを身に付けるか、マイペースを貫くか。私はどっちも中途半端だった」
今はただただ、愛子が成功することを静かに祈っている。(おわり)