〈ビートたけしはきっとホモである〉
その昔、こういったことを真剣に信じ込んでいた時期がありました。
18年程前、殿に路地裏で弟子入りを直訴し、運よくその日のうちにたけし軍団に潜り込むと、殿から、
「とりあえず、ダンカンのとこへ行け」
との指示を受けたわたくしは、その日から約1年程、ダンカンさんの付き人を務めあげ、結果、晴れて殿の付き人になる権利を獲得したのです。
付き人を卒業していくわたくしに、ダンカンさんは「北郷、知ってると思うけど、殿はホモだから、夜中に殿から『シャワー浴びて待ってろ』なんて言われる日があると思うけど、そういうことだから。あと、一応教えとくけど、殿は舐められるのが大好きだから、その練習をしておくように」と、かなり衝撃度の高いアドバイスを、さらりと言い放ってきたのです。で、この時、わたくしはこの言葉を鵜呑みにし、完全に信じこんでしまったのです。なぜに殿がホモだと聞かされ、すぐに信じたの? 説明します。
まず、たけし軍団の存在です。ご存知のとおり、殿が行き場のない男たちを集め、83年に結成されたこの集合体は100%の男所帯であり、かつて1度も女の子が在籍した試しのない、裸をユニホームとした、愛すべきバカ野郎集団です。チビ、デブ、ハゲ、変態と、有象無象の男たちが30数年にわたり、1人のカリスマの下で、痛いだの熱いだのと騒ぎたて、いたるところで裸になり、常に行動を共にしてきたわけです。こんな、かつて例のない、男だらけの団体を作った殿を、〈ホモなのでは?〉と疑うことは、それほどおかしなことではないと思います。
ましてや殿は以前、
「学生の頃、やたらと俺によくしてくれた、埼玉の友達がいたんだけどよ。ある日、そいつに散々ご馳走になって、そいつのアパートに泊まったら、そいつが夜中に俺の布団に入ってきて、舐めだしたんだよ。『うわっ』って思ったけどよ、まー散々ご馳走になったし、女だと思えば気持ちがいいかな、なんて思って我慢してたら、そいつが俺の顔のとこまで上がってきて、『今度は北野君の番』って言ったんだから」
といった話を、何度もラジオやTVなんかで話されていました。
とにかく、わたくしの中で、〈殿は女の子も大好きだけど、男の子もいける、二刀流なのでは?〉といった思いが、確実にインプットされていたわけです。