で、お次は付き人の具体的な仕事内容の説明を──。
現在、殿はテレビのレギュラーを6本やられていて、付き人はそのどの現場にも同行します。付き人は殿が入られる1時間前にテレビ局に入り、少し湿らせたタオルなど、その他諸々を楽屋に用意すると、殿が到着される駐車場へ降りていき、師匠が来るのを待ちます。
殿の車が到着するとドアを開け、「おはようございます」と挨拶し、車のトランクからその日に必要なものをピックアップして、殿と一緒に楽屋へ入る。楽屋で殿にお茶をお出しすると、その後は収録までの待ち時間、楽屋の隅で静かに立ち、殿からの“何かしらの言いつけ”に備え、待機します。
で、殿は楽屋に入られるとまず、
「おい、今日の弁当は何だ?」
と、弁当チェックをされることが大変多く、こういった時、殿は決まって、どの弁当を見ても、
「なんだかセコいな!」
と、おっしゃいます。
当たり前ですが、芸能界のトップ中のトップである、殿の収録現場で出される弁当がセコいはずはなく、どれもかなり値の張る弁当であるのは間違いありません。
が、殿は「あいつバカだろ!」や「なんだか怪しいな」といった、“よく言うただの口ぐせ”同様に、ただただ、条件反射的に「セコい」とおっしゃるのです。
以前、楽屋に入られた殿が早々と弁当チェックを済ませ、
「今日のはまた一段とセコいな!」
と漏らされ、弁当を口にすることなく、2時間程の収録を終え楽屋に戻ってくると、恐ろしい速さで、その“一段とセコい弁当”をかき込み出し、喉を詰まらせながらも、きれいに残さず平らげ帰っていかれたことがありました。
そんな殿は、弁当をご自分で食べない時でも、決まって、「俺はいいから、お前、弁当食べちゃえよ」と、付き人に指示を出されます。で、こういった時、付き人は少しばかり困ってしまうのです。なぜに困るの?説明します。
まず、収録前の決して広くはないテレビ局の楽屋で殿と2人きりの状態です。そんな大変静かな楽屋で、殿が食えといったからといって、殿の視線が届く範囲で座りながら弁当をむしゃむしゃと食べだすのは、どう考えても気が引けます。
もちろん殿は、ご自分が「食べちゃえよ」と指示を出したわけですから、何とも思っていないとは思います。が、やはりビートたけしの視線を至近距離で浴びながら、弁当を食べだす行為は大変気まずく、できれば避けたい行為です。ちなみに、かつて軍団の兄さんより、“殿から食べろと言われたら、素早く残さず食べるのが決まりであり、残すなんてもってのほか!”と、強く教わった、入門3日目のある付き人が、殿より、「俺はいいから、お前食っちゃえ」と、促され、一目散に弁当を食べだしたことがありました。が、その弟子、〈とにかく全部食べなければ!〉といった思いがあまりにも強く、殿がヒゲを剃ったり、着替えをしたりしている間も、あろうことか殿をほったらかしにして、夢中になってひたすら食べ続け、結果、楽屋にあった4つの弁当すべてを空にしてしまったのです。
それを見た殿は、
「あいつ(付き人ね)は食べ物見ると人格が変わるから、あいつの前にもう食べ物を出すな!」
と、やや怒り気味に、もう1人の付き人に忠告されていました。