健康不安説が報じられていた神田正輝が、休んでいた番組に復帰したことで、安堵したファンは多かっただろう。そんな神田とかつて映画「エバラ家の人々」(1991年公開)で夫婦役を演じたのが、NHK朝のテレビ小説「雲のじゅうたん」のヒロインとして一躍、人気者になった浅茅陽子だ。
神田はこの映画で、安月給で妻の浅茅に頭が上がらない塾講師のダメ亭主を演じたのだが、制作発表で、
「僕が選ばれた理由? う~ん、難しい質問だな。理由はわかりません。似合うと思われているのかなぁ」
と苦笑いしていたが、その監督は浅茅が20年にわたり「入籍なき結婚生活」を送ってきた、脚本家の土筆勉氏だった。同映画はタイトルからわかるように、当時、浅茅がシリーズで出演していた「エバラ焼肉のたれ」の「販売促進」の一環として製作されたもので、東京の下町に住むエバラ一家がふとしたことで一戸建てを手に入れ、それがきっかけでハプニングに巻き込まれるというストーリーだ。
ところが映画公開の翌1992年、浅茅が「スポーツ報知」のインタビューに答え、かねてから動物保護活動にかかわってきたとして、
「ベジタリアンとしては撮影の焼肉パーティーで肉を口に入れても、あとで全て吐き出す涙ぐましい苦労をしている」
「あの(エバラ)コマーシャルはね、肉の宣伝じゃないのよ。たれの宣伝なんだから。ご飯に一度かけて食べてごらんなさい。おいしいわよ」
と告白。すると「女性セブン」が、この発言に対しスポンサーの社員が激怒している、とする記事を掲載したから大変。本人は「微笑」誌上で、
「誤解が誤解を、憶測が憶測を呼んだ。言葉の行き違いです。弁明はしませんが、不用意だったと反省しています」
と弁解するも、その後、スポンサー対応に追われたのは間違いないだろう。
そんな騒動から2年後の1994年9月、突如として報じられたのが、20年以上連れ添った事実婚相手である土筆氏の「内縁夫婦の解消」報道だったのである。同棲発覚の際には「入籍は紙切れ1枚の問題じゃない。その時が来れば考えるだけ」と語り、映画公開前の記者会見でも「ここまで来たら、彼の死に水をとるしかないわね」と語っていた浅茅。
同棲20年にピリオドを打った後に行われた囲み取材では、
「男女の関係は何年も一緒に暮らしていれば、人には言えない部分もあるでしょう。3、4年前から別れようと思っていました。お互いがプラスになる方法は、これがベスト」
土筆氏と別れてから運転免許を取得したと語り、
「別れたといっても、法的には夫婦ではなかったわけですからね。これからは1人でしっかり生きていこうと思います。新しい恋人も見つけますよ」
いたってサバサバした様子。誰が言ったか知らないが、男は過去に生き、女は未来に生きる、というフレーズが猛烈に腑に落ちる場面だった。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。