立憲民主党の枝野幸男前代表がこのほど、さいたま市での講演で、同党が次期衆院選で対決する自民党の総裁は岸田文雄首相ではなく、上川陽子外相だとの見方を示した。
内閣と自民党の支持率の低迷から、自民党内では岸田首相では選挙は戦えないとして、9月の総裁選で上川氏に交代し、女性初の首相として選挙に臨む、との分析によるものだ。
他党の総裁人事の予想をする枝野氏だが、実は触れなかったことがある。それは立憲民主党も9月末で泉健太代表の任期が切れるということだ。泉氏は次期衆院選で獲得議席が150議席を下回れば辞任すると明言しているが、知名度の低い泉氏では選挙は戦えない、という声は、これまた立憲民主党内に根強い。
そこで浮上してくるのが、野田佳彦元首相と枝野氏だ。野田氏は国会で安倍晋三元首相の追悼演説をしたほか、最近の国会質問では岸田首相を厳しく追及するなど、存在感を高めている。
ただ、野田氏は首相在任中、「財務省の言いなり」「田中真紀子氏の夫・田中直紀氏を防衛相に起用するなど人事下手」との評価がすっかり定着した。
さらに野田氏は、日本維新の会を含む他の野党との連携を訴えているが、枝野氏は維新の会について、
「大臣、副大臣、政務官をやったことがない素人ばかりの『第2自民党』がいきなり政権を取ったら、2009年の民主党政権どころではない。大惨事が起きる」
と酷評している。立憲民主党の中堅議員が内情を明かす。
「党の独自性を訴える自身に代表の座が回ってくるとみて、枝野さんは徐々に発信を強めている」
枝野氏はソフトなところも見せようと、今年1月のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組では、趣味のカラオケで人気音楽ユニットYOASOBIの曲を歌える、と明かした。
内閣支持率、自民党の支持率低下を受けて、立憲民主党にも動きが出てきそうだ。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)