敏腕代理人のスコット・ボラス氏が、来季の藤浪晋太郎のメジャーリーグ残留に向けて、必死になっている。
現在、メッツ傘下の3Aシラキュースでプレーするに藤浪は、悪戦苦闘中。9試合に登板した時点で7回2/3を投げて9三振を奪っているが、19四死球、防御率14.09と悲惨な成績。ノーコンがいっこうに直らず、メジャー昇格は夢のまた夢だ。
だが、ボラス氏が現地時間5月6日に取材に応じると、
「今、藤浪は今までなかったような環境で投げている」
と擁護した。長年、メジャーリーグを取材するスポーツジャーナリストは、この発言に「ボラス氏の焦りを感じる」と話し、その背景を説明する。
「かつて球界随一の敏腕代理人と言われたわけですが、今やジリ貧状態です。ブレイク・スネルやジョーダン・モンゴメリーなど大物を抱えながら、昨年オフは目立った成果を残せなかった。とりわけコディ・ベリンジャーの契約は大失敗だと、米球界では話題になっていますね。カブスとの契約延長オプションを破棄して他球団との高額契約を狙ったものの、思惑通りにはまとまらず。結局は3年8000万ドル(約120億円)でカブスと再契約を結ぶ形で白旗を揚げています。かつては吸血鬼と呼ばれ、各球団に恐れられていましたが、もう以前の強気の手法は通じなくなっています」
藤浪の契約に関しても、不利な条件を飲んだとされている。年俸こそ1年335万ドル(約5億円)プラス出来高だったが、わずか1年契約。しかも、藤浪本人が望んだ先発での起用という条件は勝ち取れず。その上、昨年はあった、マイナー落ちを拒否する権利も盛り込まれなかった。そのため、オープン戦で結果が残せなかった藤浪は、現状に甘んじている。
まさに「負け」に等しい契約だが、代理人としては死活問題だろう。
「ボラス氏は『藤浪はリズムが戻ってくれば、去年のいい時のようなピッチングができる。彼はメジャーレベルの球威を持っている』と報道陣に語りましたが、もはやその言葉を鵜呑みにする者は少ない。来季もメジャーでのプレーを望む藤浪が、どんな契約を結べるのか。その結果によって今後、ボラス氏を頼る日本人選手はいなくなる可能性もあるでしょう」(前出・スポーツジャーナリスト)
今後も、メジャーを目指す日本人選手が増加の一途をたどるのは間違いない。それだけに、吸血鬼も藤浪の売り込みに必死にならざるをえないのである。
(阿部勝彦)