前週で上半期の中央競馬が終了したが、ここで騎手を中心に、簡単に振り返ってみることにしよう。
一番の驚きは、フェブラリーステークスから宝塚記念までの平地GI全12レースを、それぞれ異なる騎手が勝ったことだ。これはJRA史上初めてのことであり、珍事と言っていいだろう。
この珍事を演出したのは、GI初制覇を成し遂げた菱田裕二、津村明秀、菅原明良の3人だ。菅原はデビュー6年目の若手で、同期では2023年の高松宮記念をファストフォースで勝利した団野大成に次ぐGI騎手となった。21世紀生まれの騎手による、初のGI勝利でもある。まだ若いので、前途洋々だろう。
リーディングジョッキーは大方の予想通り、クリストフ・ルメールと川田将雅の争いとなっている。ルメールがドバイでの落馬負傷で約1カ月休んだことを思うと、実際の数字以上の差がある。
そのルメールは宝塚記念が終わると夏休みを取り、7月27日の新潟競馬が始まるまで、フランスで家族サービス中。これまで1カ月も休みを取ることはなかったが、今年は故郷で英気を十分に養ってくるようだ。
ちなみに、今年の夏は涼しい北海道ではなく、新潟で騎乗する。アーモンドアイの初仔をはじめ、ノーザン系クラブの有力新馬が新潟デビューを予定しているからだ。日本に戻ってくると、勝ち星を量産することになるだろう。
女性騎手には心配なことが立て続けに起きている。古川菜穂と小林美駒が大きな事故により、戦線離脱を余儀なくされた。今村聖奈も函館競馬場での調教時の落馬による右肩負傷で、今週から数週間は騎乗できないようだ。女性騎手に疫病神が取り憑いているのだろうか。
最後に、今週デビューする期待の新馬について触れておきたい。
函館日曜の新馬5R・芝1800メートルには、素質馬が勢ぞろい。この舞台からゴールドシップやソダシといったGI馬が生まれているだけに、目が離せない。
注目しているのは、モーリス産駒のゴーゴータカシ(牡、美浦・武井厩舎)。調教で古馬オープンのゴーゴーユタカと併せて、馬なりのまま併入するぐらい走る。武井師は、
「6月2日の東京新馬・芝1400メートルを勝ったスターウェーブより体力がある。パワータイプで、函館の洋芝も合う」
と自信ありげだ。
(兜志郎/競馬ライター)