ベテランの扱い方が勝敗を分けたようだ。7月30日、首位巨人を3.5ゲーム差で追う阪神が、直接対決に臨んだ。試合は5-1で阪神が勝利したが、ポイントとなったのは7回表の攻防。巨人が1点を返し、なおも二死満塁。そこで阿部慎之助監督が送り出した代打は、ベテランの坂本勇人だった。
この展開に、甲子園球場はザワつく。投手は左の桐敷拓馬。左打者の吉川尚輝に代えて右打ちの坂本が送られたのだが、「坂本で大丈夫か?」という雰囲気だった。
結果は3球三振。その後、坂本は三塁の守備もついたが、2度目の打席は回ってこなかった。スポーツ紙デスクが言う。
「坂本の調子が上がってきません。でも二死満塁の場面でヒットを打てば後半戦に弾みがつきますし、そのための代打起用だったと思われます」
長くチームを牽引してきたが、今季はベンチスタートとなる日が多くなってきた。戦力としてアテにしていると認識させることが、阿部監督の目的だったようだ。
そんな「ベテランのトリセツ」は、同じ日の他球場でも見られた。広島・新井貴浩監督は、プロ17年目の松山竜平を「7番・一塁」でスタメン起用している。松山はおよそ1カ月間、ヒットが出ていない。
松山が代打稼業に回って久しい。代打で1カ月もヒットなしとなれば、気持ちは重くなる。あえてスタメン出場させた目的は、4打席を与えて不振脱出のきっかけをつかんでほしかったからだ。当然、新井監督はペナントレース終盤での「代打・松山」を計算に入れている。
7月29日に中日の立浪和義監督が、ベテランの中島宏之を2軍に降格させた。代打に徹してきた中島は今季、13打数ノーヒットだ。
7月30日の2軍戦、中島は試合に出ていない。この時期のベテランの登録抹消は「オフの進退問題」に結びつくケースが多いが…。
ベテランに対し、不振脱出の機会をどんなふうに与えるのか。監督の手腕が試される。
(飯山満/スポーツライター)