サッカーJ1の鹿島アントラーズが、ランコ・ポポビッチ監督を電撃解任した。解任前日、アルビレックス新潟に4-0で大勝していたのだが…。スポーツ紙記者が状況を解説する。
「暫定4位ですが、リーグ戦直近7試合で1勝3分3敗とふるわなかったため、新潟戦の勝敗は関係なかったのです。前半戦は11試合負けなしを記録するなど2位で折り返しましたが、夏場に調子を落として優勝争いから脱落。来季を見据えて、フロントは早めの決断を下したというわけです」
今季就任1年目ながら、ポポビッチ氏の特徴である攻撃的スタイルを浸透させた。選手を見抜く目は鋭く、ゴリゴリのFW知念慶をボランチにコンバートするサプライズ采配を実行すると、転向したばかりとは思えない大活躍で、その才能を開花させている。
このように育成力にも長けていることは確かで、大卒ルーキーの濃野公人(のうの・きみと)を開幕戦からスタメン起用すると、濃野はそれに応え、サイドバックながら9得点を記録し、ブレイクしている。8季ぶりの国内主要タイトル獲得を逃したとはいえ、1年目からの収穫は大きかったはずだが…。
「ここ数年、鹿島の短期政権はお家芸になっています。2017年から2019年まで大岩剛監督が指揮を執ってからの迷走ぶりは明らかです。2020年シーズンに就任したザーゴ監督(ブラジル)は、翌2021年シーズンの4月に、15位という成績不振で解任。引き継いだクラブOBの相馬直樹監督はチームを立て直して4位まで引き上げましたが、翌年のアジア・チャンピオンズリーグの出場権を逃したことで、契約延長を見送ってシーズン後に退任しました」(サッカーライター)
Jリーグ開幕の1993年から一貫してブラジル人、もしくはジーコイズムを受け継いだ日本人が監督の座に就いていたが、クラブはここから歴史的方向転換を行った。サッカーライターが続ける。
「2022年シーズンから、初の欧州出身レネ・ヴァイラー監督(スイス)が就任しましたが、ロングボール中心の縦に速いサッカーがハマらなかったのか、8月にクラブ史上最短で契約を解除されました。その後、クラブOBの岩政大樹氏が緊急登板し、そのまま2023年シーズンを引き継いで5位に。これもシーズン終了後に契約満了で退任となっています」
そしてオーストリアとセルビアの国籍を持つポポビッチ監督が就任したわけだが、サポーターの間では、今回の電撃解任には驚きよりも「やっぱり…」の声が大勢を占めた。
「結局、鹿島にとって『ジーコスピリッツ』は、揺るがないフィロソフィー(哲学)です。それでも再び欧州路線に挑戦し、久しぶりに優勝争いをして希望が持てたはずなのに、わずか10カ月で解任してしまった。これでまたブラジル人監督に戻すようでは方向性がハッキリしないし、クラブOBが就任したところで、長期政権を任される望みは薄い。我慢ができないフロントの迷走ぶりに、サポーターは『また同じことを繰り返したのか』と辟易しています」(前出・スポーツ紙記者)
このままでは「常勝軍団」の復活どころか、クラブの指揮を執りたいという人物すら現れないのではないだろうか。
(風吹啓太)