球春到来にはまだまだ早いが、2025年に投打二刀流の復活が期待されるドジャース・大谷翔平は今季、投手として何勝するのか。1回目の右肘トミー・ジョン手術を受けた後の投手成績から予想してみた。
大谷が右肘に靱帯を移植するトミー・ジョン手術を受けたのは2018年10月。エンゼルスに移籍した1年目、アメリカン・リーグの新人王を受賞したシーズン終了後で、翌2019年は打者に専念して106試合に出場し、18本塁打、384打数110安打、2割8分6厘、12盗塁をマークした。この年は9月に左膝蓋骨の手術を受けて、シーズンを終えている。
そして運命の2020年。新型コロナの影響で、メジャーリーグは例年より4カ月遅れで開幕。キャンプも中断するなど調整に苦しんだ大谷は、2試合しか投げていない。
693日ぶりに先発登板した7月26日のアスレチックス戦は、ア軍先頭打者のセミエンにセンター前安打を打たれたのち、3連続四球、2連続適時打などで一死も取れないまま、30球5失点で1回途中降板した。
そして8月2日のアストロズ戦でも、1回は三者凡退に抑えたものの、2回途中から制球が定まらず、この回だけで5四球。1回2/3、50球を投げて無安打2失点、5四球で降板した。
試合後の精密検査で、右前腕屈筋回内筋を損傷していることが判明。その後は打者に専念した。44試合に出場して7本塁打、153打数29安打、打率1割9分。特に得点圏打率は1割4分3厘で、エンゼルスはア・リーグ西地区4位に沈んでいる。
2020年に損傷した右前腕屈筋回内筋は、トミー・ジョン手術で腱を移植した肘関節を肘の外から前方にかけて包んだ筋肉群のひとつで、投球フォームに無理がかかると変化球をリリースする際に痛める箇所だ。
1回目のトミー・ジョン手術後、フォームが定まらないまま実戦に臨んだことが2020年シーズンの不調の原因なら、2度目の右肘手術後、左肩亜脱臼手術後の今シーズンオフと来季キャンプでは、利き腕に負担をかけないコンパクトな投球フォームへの改良が課題になる。
ドジャースには練習中や試合中に撮影した投球フォーム、打撃フォームを解析する世界最先端の「マーカーレス・モーションキャプチャーシステム」が導入されており、リアルタイムで投球フォームのわずかなズレをチェックすることができる。
大谷が2024シーズン「50本塁打50盗塁」を達成できたのは、打撃フォームから走塁までをモーションキャプチャーでチェックした成果によるものだった。これらデータ解析担当者のアイアトン氏が大谷の専属通訳であることから、2020年のような二刀流復活失敗は、もうないだろう。
メジャーリーグの規定投球回は162イニング。もし大谷が公式記録を意識するならば、中6日のローテーションで25試合以上には登板せねばならず、大谷のメジャー通算平均勝率6割6分7厘で計算すれば、16勝することになる。
もし手術後のシーズンに、これだけの成績を残せたならば…。ジョーブ博士が考案した腱移植術を人類で初めて受けた後に20勝したメジャーリーグのレジェンド、トミー・ジョン投手の名前がつけられたたように、ジョーブ博士の後継者で大谷の主治医エラトロッシュ医師は、トミー・ジョン手術を改良した、まだ名前のない「ハイブリッド手術」に「ショウヘイ・オオタニ手術」の名を冠し、医学界で発表することだろう。
(那須優子)