今季のJ1リーグは、実に8人もの新監督が就任した。
鹿島アントラーズの鬼木達監督、川崎フロンターレの長谷部茂利監督、柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督、FC東京の松橋力蔵監督と、Jで実績を残した監督もいれば、横浜F・マリノスのスティーブ・ホランド監督のように、イングランド代表のコーチを務めていた監督もいる。
そんな中、やはり気になるのは鬼木監督だ。昨季まで川崎の監督を8シーズン率い、リーグ優勝4回、ルヴァンカップ優勝1回、天皇杯優勝2回と7つのタイトルを獲得し、川崎を常勝軍団に導いた。
ここ2シーズンはチームの得点源だったレアンドロ・ダミアンの負傷離脱が響き、昨季は頼みの新外国人選手がほとんど機能せず、開幕から苦しんだ。それでもシーズン後半にはなんとか、チームの形を作っていた。
その手腕は、攻撃力に課題があると言われていた日本代表の次期監督候補に、必ずと言っていいほど名前が挙がっていたほどだ。
鬼木監督にとって、鹿島は自らがプロキャリアをスタートさせたチーム。その古巣を再び、常勝軍団として復活させることができるか。
今冬の補強は評価したい。目玉はセレッソ大阪で昨季、得点ランキング2位(21得点)のレオ・セアラの獲得だ。15得点の鈴木優磨とのコンビネーションが合えば、2人で30得点以上は期待できる。レオ・セアラは今季、Jリーグ5シーズン目。鹿島がどういうチームで、鈴木のプレースタイルもわかっているはずだ。
荒木遼太郎の復帰も心強い。FC東京にレンタル移籍していたが、パリ五輪の主力に成長している。層が薄いサイドバックは、マリノスから小池龍太を獲得。両サイドを同じレベルでプレーできるため、鹿島にとっては大きな補強だ。鬼木監督1年目の鹿島は面白い。
FC東京の松橋監督にも注目したい。昨季、アルビレックス新潟を攻撃的なサッカーでルヴァンカップ決勝に導いた手腕は、高く評価されている。2021年の新潟時代、アルベル・プッチ・オルトネダ監督の下、コーチとして指導経験がある。そのアルベルがFC東京の監督に就任し、新潟の監督に就任したのが松橋氏。アルベルのサッカーを進化させ、攻撃的なサッカーを新潟に浸透させた。
FC東京でもアルベルのサッカーを進化させることが求められているだろうが、会見で「新潟と同じサッカーをやるのか」の質問に「違います」と答えている。
サガン鳥栖からストライカーのマルセロ・ヒアン、ボランチに日本代表経験のある橋本拳人(エイバル・スペイン)と、実績のある選手を補強。松橋監督がFC東京をどんなサッカーでどう変えるのか、楽しみしかない。
もうひとつ、新監督ではないが、J1初昇格のファジアーノ岡山を指揮する木山隆之監督。Jリーグで指揮を執るのは、今季で14年目となる。これは歴代5位になる長さだ。主戦場のほとんどがJ2だったが、2020年にベガルタ仙台監督時代以来の、J1での指揮となる。戦力的には厳しいが、経験豊富な指揮官がどんな采配を見せるか。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。