将棋の渡辺明九段に、まさかの「A級陥落」の可能性が出てきた。
渡辺九段は1月28日に行われた第83期名人戦・A級順位戦8回戦を「対局の続行ができない」として途中投了。昨年12月の7回戦も脚の痛みを理由に途中で投了しており、A級戦残り2対局を残して3勝4敗となった。
渡辺九段は昨年夏、フットサル中に膝を痛め、前十字靱帯の再建手術を受ける重症を負った。現在は左脚に装具をつけているため、8回戦では椅子に座っての対局となった。
対局相手の佐藤天彦九段から「横になって寝ながら指したらどうか」と助け舟が出されたが、「脚の感覚がなくなり気持ち悪かった」と明かし、帰宅した。
まさかの2連続途中投了で、順位戦の行方はどうなるのか。現在、豊島将之九段、菅井竜也八段が3勝で並んでいる。渡辺九段は2月21日の永瀬拓矢九段との対局に敗れた場合、菅井八段と2月27日に直接対決。この敗者がB級1組に降格となる。もはや1敗もできない状況なのだ。
A級順位戦では病気などの理由で休場した場合は「張出」となり、順位最下位で留まることができるルールがあるが、すでに最終盤に差しかかっており、今回は適用外。下馬評では5勝2敗と好調の永瀬九段に勝利するのは難しいとみられており、最終局となる菅井戦が互いの残留を懸けた対局になりそうだ。
次局を休むことも検討しているという渡辺九段だが、むやみに不戦敗になると他の棋士の成績に影響するため、悩ましいところ。不慮の事故とはいえ、趣味のフットサルでケガをしたことで、将棋ファンの見る目が厳しいのは事実だ。
30代が中心のA級棋士の中で唯一、40代の渡辺九段。古豪の奮起を期待したい。
(ケン高田)