米トランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織のトップ、実業家のイーロン・マスク氏は2月3日、自身のXで、トランプ大統領との協議の結果、アメリカの海外援助を統括する国務省参加の米国際開発局(USAID)を閉鎖する必要がある、との認識で一致したと明らかにした。
米民主党はすぐに反発しているが、日本のメディアも「USAIDはエイズ対策や紛争地での支援など、世界各地で幅広く人道支援を行っているだけに、波紋が広がりそう」(NHK)、「USAIDの職員が自宅待機を命じられるなどの混乱も生じており、人道支援などの対外援助に大きな影響を及ぼす可能性がある」(朝日新聞)などと、批判的に報じている。
マスク氏は「(閉鎖で)『本当にいいのか』と何度も確認したが『イエス』と言ったので、閉鎖する」と述べた。トランプ大統領自身も記者団に「USAIDは過激な愚か者によって運営されている。彼らを排除し、その後どうするか判断する」と語っている。
日本のメディアは報じていないが、レビット大統領報道官は記者団に対し、USAIDの無駄遣いトップ4を挙げている。具体的には①セルビアの職場でDEI(多様性、公平性、包括性)プログラム推進に150万ドル、②アイルランドのDEIミュージカル制作に7万ドル、③コロンビアでのトランスジェンダー・オペラに4万7000ドル、④ペルーでのトランスジェンダー漫画本に3万2000ドルを拠出している…として批判した。
トランプ大統領は1月20日に就任した直後、バイデン前大統領が進めたDEIを終了する大統領令に署名した。民主党や米メディアは批判しているが、翌日には「違法な差別を終了し、実力に基づく機会の復活」を求めた。
民主党寄りの大手米メディアの報道を転電するだけでは、トランプ政権の政策がアメリカ国民に支持されている理由がわからないだろう。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)