この冬、全国各地で「冬眠しないクマ」の出没が相次いでいる。
日本列島にはヒグマ(北海道)とツキノワグマ(本州以南)が棲息しているが、冬眠しないクマの目撃情報は全国レベルで急増している。
中でも住民を震え上がらせているのが、街中を我が物顔でウロつく「アーバンベア」の存在だ。事実、福島県喜多方市では「ツキノワグマが茶の間のコタツに頭を突っ込んで休んでいる」との仰天通報が寄せられ、街を挙げての大捕物劇が展開された。
山野が深い雪に覆われると、活動に必要なエサは枯渇する。そのためクマは秋の終わりまでに木の実や果実などを大量に摂取した上で、冬場は代謝レベルを仮死状態にまで引き下げて、巣穴で雪解けを待つ。これが、いわゆる「冬眠」のメカニズムだ。
ところが近年、そのメカニズムに尋常ならざる異変が起きているというのだ。クマの生態に詳しい動物学者が指摘する。
「エサが枯渇してしまう雪深い山野とは違い、街中には冬場でもエサが豊富に存在します。人里近くを根城にしているアーバンベアはそのことを経年的に学習し、民家やスーパーや食糧倉庫などに忍び込んでは、エサを漁り続けるのです。エサさえあれば、冬眠の必要はない。実際に街中で目撃された『冬眠しないアーバンベア』は、丸々と太っています。近年の急増ぶりから見ても、深刻な人身被害が発生するのは時間の問題と言っていいでしょう」
今冬、筆者が訪れたスキー場(長野県北部)に近い街中の住民も、冬眠しないアーバンベアについて、次のように不安を口にしていた。
「つい1週間前にも、この先のスキー場に続く県道で、クマの目撃情報がありました。クマは県道脇のフェンスをよじ登って姿を消したそうです。厳冬期にクマが出るなんて考えられないことで、みんな『おっかない』『神経がもたない』と言っています」
1年365日、クマだらけ――。まさに「異常事態」である。
(石森巌)