戦わずして白旗は揚げられない。阪神からポスティングシステムを利用してメジャーリーグの強豪フィリーズとマイナーを結び、メジャーキャンプに招待選手として参加する予定だった青柳晃洋が、ピンチに陥っている。2月12日(現地時間)はフィリーズのバッテリー組の集合日だったが、就労ビザ取得が遅れ、合流できなかったのだ。
ドジャースの大谷翔平や山本由伸のように、チームの主力選手として扱われている選手ならいざ知らず、招待選手はいわばテスト生。キャンプ初日から自分の存在をアピールしなくていけない立場にある。長年、メジャーリーグを取材するスポーツライターが説明する。
「メジャーリーグの春季キャンプには上限40人の登録選手(ロースター)と、メジャー契約を結んでいない招待選手が参加しています。年齢的な問題ですぐにはメジャー契約を結べなかったドジャースの佐々木朗希のような存在ではなく、招待選手がメジャー契約を勝ち取るのはハードルが高い。昨年の上沢直之のように、レイズではメジャー契約が取れずに契約を破棄するケースは多いですからね」
招待選手からメジャー契約を勝ち取るケースはゼロではないが、大半は実績がありながら、故障などなんらかの理由で他球団との契約に至らない場合が多い。日本では実績があるが、アメリカでは知名度なしの青柳がロースター入りを手に入れるには、過酷な生き残り競争を勝ち抜かなくてはならない。アピールのためには1日、いや1分、1秒でも無駄にはできないのだ。前出のスポーツライターは、
「フィリーズはザック・ウィラー、アーロン・ノラ、レンジャー・スアレスなど先発5本柱がおり、青柳が割って入る余地は今のところ、見当たりません。中継ぎ陣も数が足りています。メジャーでは珍しい投げ方なので通用する可能性はありますが、それは登板のチャンスがあれば、の話ですからね」
青柳はメジャー契約を結べなければキャンプ、オープン戦で受け取れるのは「日当4500円程度」であり、合流できなけは無給となる。チーム関係者によれば、近日中にもビザを取得できる見込みだが、正式には決まっていない。
「このままならアピールできず、開幕をマイナーで迎え、這い上がっていくしかないですね。フィリーズとの契約がギリギリになった影響が出ました」(メジャー関係者)
日本を代表するサブマリンには、腐らずに挑戦を続けてほしいが…。
(阿部勝彦)