NHKや全国の新聞社に記事を配信する共同通信は「正確公平な内外ニュースを提供し、公平な世論の形成」に寄与することを目的としている。だがそれに疑問を抱きたくなるような記事があった。2月18日配信の「選択的別姓9割賛成、団体調査、通称使用に不満」という見出しのものだ。
これだけを見ると、今国会の焦点のひとつとなっている選択的夫婦別姓について、世論の圧倒的多数が賛成であるかのような印象を受ける。
記事によると、「新日本婦人の会」が2月18日までに会員やその知人ら計3979人にアンケートを実施した結果、93%が導入に賛成と回答したという。さらに「記述欄には『真に対等な関係を築くために必要』とする意見や、『私は私、夫の従属物ではない』との不満が書かれた」としている。
国会議員へのメッセージも紹介し、「『付き合って10年の彼氏と5年前に婚約したけど、いまだに法律婚をしていないのは夫婦別姓が選べないからです』(20代)などの切実な声が寄せられた」と伝えた。
この報道を受けて、「新日本婦人の会」はさっそく反応した。Xに「共同通信の記事になりました。昨年11月にはじめた『選択的夫婦別姓制度をただちに導入することを求める請願』署名は今日までに5万3千人分集まり、本日国会へ一次提出します」と書き込んだのだ。共同通信はこの団体と歩調を合わせていることがわかる。
記事の見出しには「団体調査」とあるが、これはミスリードではないか。というのも、「新日本婦人の会」は共産党シンパの団体として知られるからだ。前会長は共産党衆院議員の妻であり、共産党との結びつきが深い団体である。
当然のことながら、共産党は選択的夫婦別姓を推進している。ならば、この団体が「公平な組織」ではなく、共産党シンパであることを明記する必要があろう。それがミスリードたるゆえんである。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)