厚生労働省はこれまで「日本の年金制度は破綻しない」と説明し続けてきた。ところがこの説明は典型的な「霞が関文学」であり、「破綻しない」に続く一文が省略されている。厚労省は霞が関文学を駆使することによって、
「年金制度は破綻しないが、年金生活は破綻する」
という恐ろしい真実を葬り去っているのだ。そのウラには厚労省がひた隠しにする「悪魔のカラクリ」が存在する。
この際、複雑な年金制度の詳細には踏み込まないが、ズバリ、悪魔のカラクリを読み解くポイントは「年金支給開始年齢の引き上げ」と「年金支給額の引き下げ」にある。
厚労省は年金支給開始年齢を、すでに60歳から65歳へと引き上げている。これは年金支給額の引き下げとセットで実施されてきたが、あろうことか、厚労省は支給開始年齢をさらに70歳にまで引き上げようと目論んでいるのだ。年金制度と厚労省の舞台裏に詳しい全国紙社会部記者が明かす。
「厚労省は未曽有の少子高齢化を見据えて極秘の試算を行った結果、『今後、年金の支給額を引き下げ続けたとしても、支給開始年齢を70歳に引き上げなければ、年金制度はいずれ破綻してしまう』という結論に達しました。したがって、支給開始年齢が70歳に引き上げられるのは時間の問題です。しかもそれと同時に『支給開始を80歳まで繰り延べれば支給額を増額する』というニンジンまで準備しているのです」
考えてもみてほしい。日本人男性の平均寿命はおよそ80歳で、多くの場合、男性は世帯主となっている。つまり、年金の支給開始年齢を80歳まで繰り延べた場合、約半数の男性が年金を1円ももらわないまま死亡する、というハメに陥ってしまうのだ。
それだけではない。仮に90歳、100歳と長生きしたとしても、年々歳々、年金の支給額は下がり続けていくため、男女を問わず年金生活は破綻に追い込まれてしまうのだ。
制度は破綻しないが、生活は確実に破綻へと向かう――。
まさに笑えない「究極のブラックジョーク」ではないか。
(石森巌)