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【インタビュー激白】11年前に撮影した問題映画がついに!永瀬正敏が見出した女優ミズモトカナコ「21歳の難役」

 学生時代に永瀬正敏が抜擢…ミズモトカナコが11年前に主演した映画が、ついに公開された。大学同期はNHK朝ドラ「虎に翼」の土居志央梨。映画「福田村事件」では永山瑛太の妻を演じるなど、ブレイクを予感させる女優だ。

 11年前に製作された問題の作品は、名古屋のミニシアターでのみ上映された「いきもののきろく」という中編映画。原案は、自ら主演を兼ねる永瀬である。永瀬は当時21歳の大学生だったミズモトに白羽の矢を立てた。

 東日本大震災からまだ3年弱しか経っておらず、被災地への想いが色濃く滲む。男(永瀬)は廃墟のような街でひとり、筏(いかだ)を作り続ける。そこへ女(ミズモト)が現われた。登場人物は男と女、2人だけ。しかもこの映画はモノクロでセリフがなく、必要最小限のセリフは無声映画のように字幕で語られるのみ。

 現在は32歳となり、女優としての輝きを放つミズモトに、この難役の秘話を聞いてみた。

――映画はこれが初出演でしたか。

 いえ、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科1年生の終わりに、当時、学科長だった林海象監督が撮った「弥勒 MIROKU」(2013年)での少年役が初めてになります。原作の稲垣足穂の世界観を表現するため、少年役は全員、俳優コースの女子学生だったんです。

――他には「虎に翼」の土居志央梨さんだったり、「本気のしるし」(深田晃司監督)の土村芳さんだったり、「夜明けまでバス停で」の大西礼芳さんだったり、錚々たるメンバーですね。

 林海象監督に見る目があったんでしょうか(笑)。当時はみんな同じ、俳優を志す大学生でした。初めての映画で、こんな素晴らしい俳優と出会えたことは、今考えるととても幸せなことですね。

――そこで永瀬さんとも共演して。なぜその中でミズモトさんだったんでしょうか。

 その映画でみんなでプチョン(国際ファンタスティック)映画祭に行ったんですよ。その時に電車に乗り間違えて、俳優陣で私だけレッドカーペットを歩けなかったんです。それで永瀬さんが「残念だったね」と声をかけてくれたんですけど、私は「また来るから大丈夫です」って答えたんです。それが印象に残っていたみたいです。本音はとても悔しかったですけど(笑)。

――でも映画を見る限り、それだけではありませんよね。永瀬さんにも見る目があったんでしょうか。プレッシャーは相当あったのでは…。

 あったとは思うんですけど、それよりはお芝居をしている永瀬さんの記憶が大きくて。あの世界で女は、永瀬さん演じる男にしか出会えていない。だからすがりつくような気持ちがあったと思うんです。役者としての私はまだ学生で、芝居のシの字も知らない、そんな中でどうしても永瀬さんに頼ってしまう気持ちがあって、それが役の女と、不思議と重なったような気がします。だから自然に演じられたのかもしれません。

――そもそも、どうして俳優になりたいと思われたんですか。

 小学6年生の時の学芸会で、本番前はものすごく緊張して早く終わってほしいと思っていたのに、終わって他のクラスの劇を見た時、「もう一回やりたい!」という気持ちが湧いてきて、自分でも驚いたんです。ですが、中学高校と演劇部のない学校だったので、お芝居をやりたいという思いはずっと心に秘めたままでした。大学を決める時に、本当に自分がやりたいことはなんだろうと考え、出てきた答えが俳優でした。

――永瀬さんも言っていますが、この映画には東日本大震災の被災地への思いが強く感じられます。

 それは永瀬さんが震災の半年後に被災地に行かれた、という経験が大きいのだと思います。映画の中の「瓦礫瓦礫っていうけど、みんな生活の一部だったんだ」というセリフも、被災地で永瀬さんが実際に耳にした言葉だそうです。私もこの映画の撮影前に、舞台の公演をするために石巻の高校に行っているんです。公演前に被災地を見て回った時、一枚も写真は撮れませんでした。学校があった場所へ行って、止まっている時計や泥水がきた水位の線を見て、言葉にできない思いがありました。だから撮影の際に、その時の気持ちと役とが無意識にリンクしていたんだと思います。

――改めて見返して、どうでしたか。

 ちゃんと頑張れていたんだな、と感じました。当時の自分にできる全力の芝居ができているな、と。作品に対しては、11年経っているけど、ぜんぜん古びていないというか、感じるものが変わらないというか。それは映画としては幸せだけど、世の中的には不幸なことなのかもしれません。3.11以降も熊本や能登で地震があったり、水害があったり、世界を見ればガザやウクライナのこともありますし。だから見る人がいろんな思いを馳せながら、考えながら見る映画なんだとは思いました。その人それぞれが持っている大きさは違うけど、同じ傷、そういうものと一緒に見る映画なんだろうなと。

――関東大震災直後に朝鮮人だと言われて殺された日本人行商団を描いた「福田村事件」でも、ミズモトさんは重要な役を担いました。

 ずっと映画って、見て気持ちが楽しくなるものだっていうのがあったんですけど、「福田村事件」に出て、完成した映画を見た時に、映画が持っている意味はそれだけじゃないと思ったんです。これは作る意義のある映画なんだと。もちろんハッピーになれる映画は大好きですが、そういう意義のある映画にも、これからは関わっていけたらと思っています。

――最新作は何でしょうか。

 平松恵美子監督「蔵のある街」に、美術の教師役で出演します。岡山が舞台なので、地元出身の私としては本当に嬉しいのは勿論ですが、有り難い気持ちで臨みました。公開は7月の下旬に、まず岡山の倉敷で先行上映となり、8月下旬に東京から全国へと公開予定です。

(写真撮影:櫻井隼登/ヘアメイク:白銀太一)

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