全国257館で公開され、公開後1週間の興行収入が1億円に満たないのは「大爆死」と言われても仕方なし。
石原さとみが、失踪した幼い娘を探す母親・沙織里を熱演したことが話題となった映画「ミッシング」が苦戦している。観客からは満足度の高い評価がほとんどだが、「もっと客は入らんの?」「ガラガラ過ぎて一人で観てるみたいで怖い」と、疑問や心配の声があふれているのが現状だ。
一方で、主演・石原の評価はうなぎ上りだという。
「週刊新潮」に掲載された、同作の吉田恵輔監督によると、石原と初めて会ったのは2017年で、石原から「会いたい」という逆オファーがあった。だが、当時は石原に興味がなかったという吉田氏が、本人に会った印象は「どこか自分に飽きてしまっている感じ」「華がありすぎて浮世離れしているように見える」というもの。強烈な芸能人オーラをまとう石原の「崩し方」がわからないことから、彼女からの逆オファーを断ったという。映画ライターがうなずく。
「当時の石原は、2014年のドラマ『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)や2016年『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)など、とにかく華やかでキラキラとしたイメージがあった。映画にも多数出演していますが、実はどれが彼女の代表作だったかと問われると、考えてしまいます。はっきり言えば『だいたい同じ』で、石原自身もそう感じていたのではないでしょうか。当時のイメージを本人が壊したいと願い、吉田監督に逆オファーしたと考えられますね」
その逆オファーが、ついに実現したのが今回というわけだ。コロナ禍で書き上げた新作のキャスティングに悩んでいた吉田氏が、自分に合う役者で撮るやり方はもうつまらないと考え、「ギャンブルしてみたくなった」として浮かんだのが、石原の姿だったという。
結果、私生活でも母親となっている石原のママ演技は、観る者を「ヘタなホラー映画より怖い」と震わせ、さらに「椅子から立ち上がれないくらい泣いた」と熱い評価を受けているわけだが…。映画ライターが続ける。
「今回の『ミッシング』は、石原の代表作と言っていいでしょう。ところが、『名探偵コナン』や『ウマ娘』というアニメが闊歩し、『帰ってきた あぶない刑事』がトップに立つという、気楽に観られる作品だけが上位をにぎわせるのが現在の映画業界です。『ミッシング』にタグづけられた『重い』『リアル』『後味悪い』などのイメージは、客足まで重くさせてしまう典型的なパターンとなりましたね。もう少し、こうした映画がヒットする世界が戻ってきてほしいと思いますが、残念です」
とはいえ、すっぴん顔で窮地に陥ったママを熱演した石原には、「今までとは違う」とイメージを壊したとして、業界内でも高評価ばかりだという。
「ミッシング」は興収が大爆死のせいで、「石原さとみの代表作」とは呼ばれない可能性は高いが、女優としてのステップアップには確実に繋がったはずだ。
(塚田ちひろ)