これはもはや新たな侵略行為なのか? 一帯一路政策による「経済侵略」に飽きたらない中国の矛先は日本、しかも国家の将来を担う大学教育の場にも向けられているという。「密探 日本で暗躍する中国のスパイ」(宝島社)などの著書を持つジャーナリスト・時任兼作氏が、この危機へ警鐘を鳴らす。
「近年、日本の大学や大学院に入学する中国人留学生の数がさらに増えてきている」
政府関係者は、そう語る。
かねてより中国からの留学生数は、諸外国を圧倒していたが、それに拍車がかかっているというのである。
「背景には、中国での熾烈すぎる大学受験競争のほか、金銭的な側面などもある。中国の大学を受験するよりも日本の一流大学に入るほうがたやすいということに加えて、日本では多額の奨学金が受けられるという面もある」(政府関係者)
中国よりも大学入試が楽であり、またカネもかからないからだというわけだが、果たしてそうなのか。
受験競争の観点からすると、中国の一流大学と比べ、日本の大学のほうが倍率が低いのは事実だが、実は、それ以上に金銭的な優遇こそが誘因となっているのではないか。
というのも、日本の国費外国人留学生制度では、留学生に対し、大学の学部生の場合、入学金や授業料を免除したうえ、旅費も支給。さらに月額11万7000円の奨学金が支給される(高専、専門学校の生徒も同様)。また、大学院生には、奨学金が上乗せされて14万3000円~14万5000円だ。もちろん、学部生同様、入学金や授業料はタダであり、旅費も出る。
これに加えて、独立行政法人・日本学生支援機構をはじめ、地方自治体などでも多数の奨学金が用意されている。日本の物価が最近上昇気味とはいえ、これほどの奨学金があれば、何不自由なく生活できる。日本の学生よりもはるかに恵まれている状況なのである。
前出・政府関係者によれば、欧米と比べて生活費も安いことや、治安がいいことも中国人にとって大いに魅力だともいうが、私費留学を含めて、中国人留学生があふれている。しかも、年々、増えてきているのだ。
以下は一部を除いて2021年度の主要国立大のデータだが、それ以前と比較すると、ほとんどの大学でその傾向がみられた。
ちなみに、この時点での最大数は東京大学。3000人にも及びそうなほどの留学生が在籍していた。その数たるや2792人。それに続くのが京都大学。こちらも1500人を超える。正確には1548人だ。さらに、大阪大学が1434人、名古屋大学が1352人、九州大学が1347人、東北大学が1330人、北海道大学が1269人と続く。
各大学は、こうした状況を「国際交流」と歓迎している。しかし、それでは人がよすぎると公安関係者は指弾する。
「留学生には秘された使命が課されている。最先端技術の窃取だ。彼らは俗に言われる『学術スパイ』。背後には、孔子学院同様、統一戦線工作部(海外での情報工作を統括する党の直轄組織)と教育部が控えている。連携して日本に送り出し、その後も、しっかりと管理下に置いている」(公安関係者)
管理のための機能的な組織網まで構築しているといわれ、「中国留日同学总会」なる留学生ネットワークが存在する。同会のホームページでは、
《日本に留学する学生の中核グループとして、日本に留学するすべての学生にとって共通の心の拠り所であり、起業家精神と国への奉仕のための幅広いプラットフォームであり、中国と日本の人々の間の友情のための強固な架け橋です》
と謳いながらも、実際は統一戦線工作部などの指導下にあることを示したうえ、
《中国に奉仕する留学生の形を作りました》
と一時期は日本語で公言していたのである。中国最大の検索エンジン「百度」が提供するオンライン百科事典・百度百科でも、この点は明示されている。
つまりは、中国政府の手足となるよう指導されている組織ということだ。中国は、2017年6月に全国民に情報提供を義務付けた国家情報法を施行しているが、それと相まってますますこの組織の権限は強まっているという。
こうした中、〝中国への奉仕〟を象徴するような現象も確認された。公安関係者が続ける。
「東大や京大といった超一流大学への集中、特化だ。しかも、学部生よりも大学院生が増えている」
事実、2024年の主要国立大の中国人留学生数を調べてみると、それぞれ1000人を超えているものの、北大は1171人、東北大も1302人とやや減少。その一方で、東大が3545人、京大が1624人と急増しているのである。
特に東大での増加は著しい。同年5月の時点では3396人であったものが、半年後の11月には150人ほども増えている。しかも、増えているのは大学院だ。
5月には、学部生90人、大学院生3306人であったのに対し、11月は学部生93人、大学院生3452人という具合である。
ここから見えてくるのは、最先端技術の流出という〝中国への奉仕〟の構図だ。
実際、東京大学を舞台としたスパイ工作がすでに露見してもいる。公安関係者が明かす。
「東京大学大学院農学生命科学研究科の種苗のゲノム研究を含む最新技術が中国に渡ってしまった。中国には『黒土保護法』なる法律があるが、これは、世界三大黒土の一つとされながらも疲弊や流出などの問題を抱えている中国東北地区の肥沃な黒土地帯を保全すると同時に、食の安全保障を図るためのもの。つまり、ゲノム技術は、そのために狙われ、奪われたというわけだ」
ほかにも数々の工作が進行中だというが、
「日本は、税金でスパイを養っているようなものだ」
同関係者は、こう言って吐き捨てた。が、親中派の多い永田町のこと。得てして馬耳東風なのかもしれない。
時任兼作(ジャーナリスト)