警視庁のサイトによると、歌舞伎町のボッタクリ被害の110番通報は4月だけで341件と前年同月の約10倍を記録。被害急増の背景について影野氏が解説する。
「オレオレ詐欺などを収入源にしていた悪漢たちが、詐欺犯罪の厳罰化によって、どんどんボッタクリに流れてきていると聞いている。詐欺でパクられれば、即実刑もあるが、ボッタクリの条例違反なら初犯で数十万円の罰金程度。ローリスクでおいしい商売に映るのかもしれない」
今が稼ぎ時とばかりに猛威を振るうボッタクリ。その最新実態を探るため、歌舞伎町交番へと向かった。料金トラブルになった客と従業員が言い争いをしているのは毎夜の光景だ。
ある6人組の客は、90分の滞在で70万円を請求され、店員と交渉していた。
「そんな大金は払えない」
「伝票見てくださいよ、どこがおかしいの?」
膠着状態が続く中、被害者が警官に助けを求める。
「おまわりさん、キャバクラでこの金額っておかしいと思いませんか?」
警察は民事不介入が原則。両者の間に立つ警官も、「話し合いで決めて‥‥」と傍観の姿勢を崩さない。
「うちはいい子もそろえて、家賃だってバカ高い。赤字ですよ。おまわりさんからも払うよう説得してよ」
逆に警官がボッタクリの“援護射撃”を要請される始末。「合法ボッタクリ」を象徴する場面だ。
別の被害者2人組は、3時間以上にわたって従業員と交渉を続けていた。
「話が違うんだから絶対に5000円しか払わない」
徹底抗戦の構えを見せていたが、やがて黒塗りの高級車が交番の横に停車。店舗関係者と思しきスーツ姿の男が降りてきて、二言三言交わすと、2人は観念したようにATMで現金を下ろした。支払いを済ませて解放された2人組に聞いてみたところ、
「怖そうな人に、アンタいつまで粘るの? 警官も朝にはいなくなるよ、と言われて‥‥。30万円を10万円にしてもらいました」
他の被害者も同様に、事前の約束と異なるボッタクリ料金を支払わされていた。
サイト「歌舞伎町ぼったくり被害相談室」を運営する青島克行弁護士は憤りを隠さない。
「頼りにしていた警察官は何もしてくれない。それどころかボッタクリの従業員が、警官の前で、堂々と威圧的なふるまいすら見せている。被害者にしてみればとんでもない恐怖ですよ」
ボッタクリ被害をなくすには、被害者ひとりひとりの「戦う姿勢」が重要だと説く。
「結論は後回しでいい。覚悟を決めて身分と連絡先を明かす。どうぞ裁判を起こしてください、と。警官もそのように指導すべきで、正面きって戦う人が増えていけば、ボッタクリという商売は成立しなくなる」
水3杯に2万円を支払ったビビリ記者は、猛省するしかなかった。