「奇襲解散、してやったり」とほくそ笑んでいたら、実はまんまとハメられていた──。「一強」を背景に、延命のシナリオを描いた我が国のリーダーを手玉に取ったのは、ヤリ手の女タヌキだった。いやそれどころか、急所をガッチリと握られた男が次から次へと出るわ出るわ。そして女タヌキが「主演」を務める総選挙のあとには、大政局が待っているのだ。
「希望の党」を率いる小池百合子代表(65)が、ついにその本性を剥き出しにした。イメージカラーは都知事選出馬以来の爽やかな緑。しかし長年、永田町のドタバタ劇を見届けてきたベテラン政治記者の一人は、小池氏が仕掛けた今回の政変劇の内幕をこうブチまける。
「百合子スマイルの裏側に見え隠れする素顔は『自分ファースト』どころか、永田町でその名を馳せる男どもを次々と手玉に取る『緑のタヌキ』。実際、小池氏にまんまとしてやられたあげく、何とも身動きが取れなくなっている面々は、少なくとも7人は下らない。恐ろしい女だよ」
女タヌキに「急所」をシカと握られてしまった「七人の侍」ならぬ「七人の騙され侍」──。
その一人目は“伝家の宝刀”を抜き誤って小池氏の闘争心にあたら火をつけてしまった安倍晋三総理(63)である。
振り返れば、政権を死守するにはこのタイミングしかないと、乾坤一擲の勝負に出た衆議院解散は図に当たったかに見えた。事実、寝首を掻かれた野党は「疑惑隠し解散」と叫ぶのが精一杯。そんな中、小池氏の国政別動隊を自任する若狭勝氏(60)と細野豪志氏(46)も大慌てで新党結成に踏み切ったかに思われた。
ところがその後、小池氏が「リセット」の四文字を引っ提げ、旗揚げ間もない希望の党の代表就任を電撃宣言するや、事態は一変。自民党の選対本部幹部は、
「代表就任宣言に続く民進党の取り込み。安倍さんも小池さんがここまで周到に準備を進めていたとはさすがに考えていなかった」
として、次のように指摘する。
「小池さんが少なくとも数カ月以上前から極秘裏に野党再編を画策していたことを知って、安倍さんは青ざめていました。しかも安倍さんは解散を前に会見で『自公で過半数を取れなければ下野する』旨、明言してしまっている。要するに、完全な風の読み間違い。退路を断たれた党内は今、『もっと早く解散に打って出ていれば』との批判の声が上がる一方で、『今から解散をご破算にできないのか』との恨み節まで飛び出すなど、右往左往状態に陥っています」
まさしく昨夏の都知事選の際、自民推薦候補の決起集会で「大年増の厚化粧」と言い放った後、小池氏に手痛い反撃を食らった石原慎太郎元都知事(85)を想起させる大誤算。その安倍総理に小池氏が返す刀で仕掛けようとしている第二の電撃作戦については後述するが、揺らぎ始めた安倍一強の陰で小池氏に急所をワシ掴みにされてしまったのが第二の男、民進党・前原誠司代表(55)だった。
森省歩(ジャーナリスト)