前原氏周辺の永田町関係者は言う。
「前原代表は当初、希望の党から公認を得るにせよ、無所属として出馬するにせよ、民進党の議員全員が小池旋風の下で戦えると考えていた。ところが小池氏は突如として『排除の論理』を持ち出し、民進党内のリベラル派の排撃に乗り出す。前原代表は『話が違う!』と仰天、憤慨したものの、時すでに遅し。連合の神津里季生会長(61)を含めた小池氏との密談の際に、公党の責任者として念書すら取らず、持参金と支援組織までかっさらわれる形で小池氏にいいとこ取りを許した。そんな『言うだけ番長』に対し、民進党内から『事実上の最後の代表として歴史に汚点を残した』との痛烈な皮肉の声が上がりました」
一方、民進党が解体、吸収されていく中、小池氏に第三の男として急所を握り潰されてしまったのが、民進党をやむなく離党して立憲民主党を立ち上げた枝野幸男氏(54)である。枝野氏に近い同僚議員の話。
「永田町の一部には枝野さんらへの警戒感も含めて、立憲民主党に同情票が集まるのではないかとの観測もあるが、現実はそれほど甘くはないだろう。何よりも小池さんが黙ってそれを見ているはずがなく、枝野さんをはじめとする立憲民主党の候補者に対しては、希望の党から刺客を送り込む。比例票による復活を見込んだとしても現有議席を確保することすら難しい、というのが率直なところだ。まさに小池さんの思い描く通りにコトは進んでいる‥‥」
とすれば、立憲民主党との選挙協力を表明した「赤いキツネ」の日本共産党も含め、リベラル勢力は「緑のタヌキ」にそっくり飲み込まれてしまうことになる。が、急所を握られてしまったということでは小池氏の同志にあたる男たちも同じである。
その筆頭格にして第四の男にあたる自由党の小沢一郎代表(75)は、「政界の壊し屋」として二度にわたる非自民政権を実現させた人物。だがその小沢氏も、今回ばかりは緑のタヌキの前に剛腕を封じられ始めているというのだ。
小沢氏の動静に詳しい元側近議員の一人が、
「実は、小池さんを担いで今回の野党再編劇を秘かに仕組んだのは、小沢さんだった」
と明かした上で、その後の情勢の変化について続ける。
「小池さんに入れ知恵したのも、子分の細野さんを踊らせたのも、小沢嫌いの前原さんを口説き落としたのも、すべて小沢さんです。政権奪取への水面下工作は驚くほど順調に進み、セミが鳴き始める今年の夏前には、小沢さんの自信は確信へと変わり、場合によっては共産党を巻き込んだ政権交代劇まで視野に入りつつあった。ところが、小池さんが土壇場で民進リベラル派の排除に動いてから状況は急変した。政界再編劇の主役は名実ともに小沢さんから小池さんへと移り、小沢さんの描いていた再編シナリオも大々的な見直しを迫られることになった。目下、小沢さんは静観を決め込んでいるけど、今後、小池さんを御し切れるかどうか。内心では『うまく使うつもりが使い捨てにされた』と感じているはずだよ」
森省歩(ジャーナリスト)