今週、中山競馬は日曜日に重賞がない。土曜日の中山牝馬Sがメイン扱いだ。
常套句として「女心と秋の空」とよく言うが、女の気持ちを読めないのは競走馬も一緒だ。とにかくこの重賞はよく荒れる。
03年に馬単が導入されてからこれまでの15年間、その馬単で万馬券になったのは7回(馬連5回)。この間、1番人気馬は3勝(2着2回)、2番人気馬は勝ち馬なしで、2着もわずか2回のみ。まず、人気どおり決まらない重賞と言っていいだろう。
荒れる要因はいくつか考えられるが、一線級の出走が少なく、ハンデ戦であり、ほぼフルゲート(16頭)の競馬になることがあげられるだろう。それと、小回り中山の1800メートル戦で器用さが要求されることから、力どおりとならず、紛れがあることだ。
そして季節柄、牝馬はフケ(発情期)になりやすい。つまり、心身のバランスが取れなくなるわけで、調子のよしあしを関係者でさえつかみづらいのだ。
というわけで、穴になるのはむしろ当然。なんとも難解な一戦と言っていい。
さて、顔ぶれを見てみよう。年明けの牝馬同士による愛知杯の1~3着エテルナミノル、レイホーロマンス、マキシマムドパリがそろって出走してくる。それに加えて、牡馬一線級と手合わせし続けてきたトーセンビクトリー、堅実このうえないフロンテアクイーンなど、まさに多士済々。なんともおもしろく、見応えある一戦になりそうだ。
このメンバーなら別定戦でも簡単に決まりそうにないと思うが、それがハンデ戦である。一筋縄ではとうてい決まるまい。
では、あらためてデータをひもといてみよう。出走頭数が多いことからもうなずけるが、5、6歳の古馬がよく連絡みしている。過去15年間を見ても、7歳以上で連対したのはわずか1頭。高齢馬は繁殖入りするものが多く当たり前なのだが、まず7歳以上の馬は厳しい戦いになるということだ。
ハンデについてだが、牝馬だけにそう重量を背負わされない。ハンデ頭といっても、56キロ~57キロぐらいまで。ということで、55キロ~56キロの馬がよく連対している。とはいえ、この斤量を背負うのは実績を積み重ねてきた実力馬で、勝ち負けしても納得である。
しかし最も連対を果たしているのはその下、53キロ~54キロのハンデ馬だ。上り坂にあり、背負い慣れている斤量なのだから当然か。
それでも簡単に決まりにくいのだから、ハンデのさじ加減を読みきり、見極めるのがいかに大切か、うなずけよう。
もろもろ吟味したうえで、最も期待を寄せたいのは、バンゴールだ。
6歳馬で、まさに今がピーク。しかも年齢のわりに使われておらず、肉体は若馬とそう変わらない。
小柄で器用さがあり、中山の小回り1800メートル(コーナー4つ)は、この馬にピッタリと言っていい。前走のGIIIターコイズSは53キロを背負って10着。ならば今回はそれ以下のハンデと思われる。狙わないわけにはいかない。
その前走は、前々走で大きく減っていた体重を戻すことに専念。調教が軽かったきらいがある。そんな良化途上の状態で、勝ち馬とはコンマ4秒差の好内容。使われての変わり身を大いに期待していいわけだ。
事実、この中間の稽古は軽快そのもの。厩舎スタッフも「本来の姿に戻った。ここでもヒケは取らない」と、期待感たっぷりに、やる気のほどをにじませている。
祖母ローズバドはオークス2着馬(GIIフィリーズレビューなど重賞2勝)。近親、一族に活躍馬が多数いる血筋でもあり、よほどの道悪にならないかぎり、大きく狙ってみたい。