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戦前に3度の選抜優勝を果たしていた古豪・県岐阜商

 現在、春の選抜の優勝回数3回で2位タイに並んでいる5校のうち、3度の優勝すべてを戦前に成し遂げたチームがただ1校ある。東海の古豪・県岐阜商である。当時は岐阜商の校名だった同校は、岐阜県勢で春夏の甲子園唯一の全国制覇経験校でもある。

 初制覇は1933年第10回大会。記念大会ということもあり、出場校は一気に当時史上最多の32校となったこの大会で、春2度目の出場となった岐阜商で活躍したのがエース・広江嘉吉と控え投手兼センターだった松井栄造(早大ー藤倉電線)。初戦の静岡中(現・静岡)戦はこの2人を含む3投手の継投がピタリとハマり、6‐5で春夏通じて甲子園初勝利を飾る。2回戦の鳥取一中(現・鳥取西)戦は松井が甲子園初先発し、5‐3で完投勝利。準々決勝は広江が海草中(現・向陽=和歌山)相手に3‐0の完封勝利を挙げた。準決勝も広江が4‐0で広島商を完封し、決勝戦へ。迎えた決勝戦の明石中(現・明石=兵庫)戦は、広江ではなく松井の先発だった。この起用に応え、松井は“世紀の剛球投手”と言われた明石中の楠本保(慶大ー全高雄)と緊迫した投手戦を展開。終盤の8回表にスクイズで奪った決勝点を守りきり1‐0で3安打完封し、見事、初優勝を飾ったのだ。

 2年後の1935年第12回大会。松井は主将・エースで甲子園に帰ってきた。初戦の徳島商戦でいきなり16個の三振を奪い、11‐2で大勝。続く準々決勝では島田商(静岡)を被安打2で完封し5‐0。準決勝の愛知商戦は1‐1で5回降雨引き分けとなった試合を挟み、再試合で延長10回3‐2でサヨナラ勝ち。こうして2度目の決勝戦へと進出する。相手は打撃好調の広陵中(現・広陵)。松井は前半につかまり1‐4と劣勢に立たされるが、中盤の5回表に集中打が飛び出し一挙4得点。5‐4と逆転したあとは松井が我慢の投球で相手を抑えてそのまま逃げ切り、2度目の優勝を飾ったのだった。この翌年夏の選手権でも松井は岐阜商を優勝へと導いている。その武器である大きな縦のカーブは1メートル以上の落差があると言われ、“三尺”というあだ名で呼ばれたほど。春夏計3度の優勝をもたらし、岐阜商の黄金時代を築いたのである。

 この松井の活躍から5年後の1940年第17回大会で岐阜商は3度目の選抜制覇を達成する。マウンドを守ったのは大島信雄(元・中日など)。初戦から日新商(現・市日新=大阪)を10‐0、島田商を4‐0、福岡工を9‐0、京都商(現・京都学園)を2‐0。なんと史上2人目となる4試合連続完封で優勝を飾った。4試合で被安打わずか8本、奪三振30という快投だった。

 なお、同校は戦後に春夏計4度の準優勝を果たしているが、この時を最後に優勝からは遠ざかっている。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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