こんなアホらしい日本にはもうウンザリだ――。
外務省は年1回、海外在留邦人数の調査統計を発表している。10月1日時点で、3カ月以上海外で暮らす日本人(長期滞在者と永住者)を推計しているのだが、仕事や留学による長期滞在者は減少する一方、より良い仕事や暮らしを求めて海外移住する永住者は増加。およそ20年前の2003年は約29万1000人だったのが、2013年は約41万8000人、2023年には約57万4000人と右肩上がりで、過去最高を更新している。
日本の人口が減り、働き手も減っているというのに、海外へ移住する日本人がどんどん増えているとは、ゆゆしき事態。いったいなぜなのか。
「日本人は政治に対する信頼度が極めて低い上、税金や社会保険料の負担感はどんどん増しており、逃げ出したくもなります。男女差別も他の先進国と比べて根強く、女性は安心して子供を産み育てることができない。少子化が進むはずです。海外在留邦人数調査統計でも、永住者の女性の割合は約62%と多い。『女の子が産まれたら、日本では生きにくいから海外で育てる』と言う女性もいるほどです」(社会問題を取材するジャーナリスト)
統計によると、地域別で最も多い移住先は北米。ロサンゼルス都市圏が最多で、以下、バンコク、ニューヨーク都市圏、上海、大ロンドン市と続く。
しかし、海外移住は想像するのと実際に住んでみるのとでは大きく異なり、困難は多いだろう。元アイドルで、この5月にアルバム「Reminiscence 2」をリリースする歌手・姫乃樹リカは、米バージニア州に移住して29年だ。いわく、
「私が住んでいる街では、日本ではスーパーなどで普通に手に入る品質の良いもの…味噌や納豆、梅干し、漬物、あんこ、団子といったものはほとんど手に入りません。日本食以外でも、食パン、ケーキ、シュークリームなどもそうです。野菜だって、日本のものと比べると大味ですし。そのぶん、自分で工夫したり家庭菜園をしたりして、あれもこれも作れるようになりましたが(笑)」
質にこだわらなければ手に入るが、日本産や日本製の品質に慣れている身にはつらい。かといって、ひとつひとつ手作りするのはなかなか大変である。
さらに切実なのは、医療費だ。
「医療費が高いことはよく知られていますが、特に歯科は高いですよ。アメリカは保険に入っていても、健康保険がきかない日本の自由診療の5~10倍も治療費がかかると思った方がいいかもしれません。医療保険料も高いです。私と夫、次女の3人の保険料を合わせると、月2000ドル(約30万3000円)にもなりますから」(姫乃樹)
毎月の保険料だけで30万円とは、気絶しそうな額だ。アメリカ暮らしは、かなり稼いでいないと厳しい。
「永住者はそうした点を秤にかけても、海外暮らしを選んでいるわけですから、日本よりはまだいい、と考えている。岸田文雄総理は減税だなんだと、声高に打ち出していますが、ちょっとやそっとのことでは、日本から逃げ出す人は減りそうにない。高額の保険料でも払える富裕層ほど出ていく、ということになるのではないでしょうか」(前出・ジャーナリスト)
富裕層ほど、高い税金を払っている。その富裕層が海外に流出するということで、日本に残る人の税金はますます高くなる、とも言える。日本の人口減がもたらす問題は、極めて深刻だ。