ペットと暮らす飼い主にとって避けられないのが、いずれやってくる別れだ。犬にせよ猫にせよ、彼らにとって時の流れは人間に比べ、格段に早い。そのため、長くてもおおよそは20年程度で、その日が訪れる。そして一緒に過ごした「家族」の死に際し、飼い主は言葉では言い表せない絶望感と焦燥感を経験することになるのだ。
米イリノイ州シカゴに住む25歳の女性ペイジさんが飼うロングヘアの黒猫「アリバイ(Alibi)」は、彼女が4歳の誕生日に両親から贈られたメス猫だった。以降21年間、彼女はアリバイと一緒に長い時間を過ごしてきた。
そんなアリバイもやがて高齢となり、静かに息を引き取ったのが昨年1月のことだ。愛猫を失ったペイジさんは悲しみに暮れ、泣き続ける日々を送っていた。
そんなある日のこと、ペイジさん宛に小包が届く。送り主は生前「アリバイ」の世話をしていた日本人の女性トリマーだった。高齢のため自分でうまくグルーミングができず、すぐに毛玉ができてしまうアリバイは、亡くなる2年ほど前から、地元に住むこのトリマーの世話になっていた。
ペイジさんが小包を開けてみると、中にはメッセージカードとともに、なんとアリバイの被毛を寄せ集めて作られたハート型のオーナメントと星型のキーチャーム、さらにペイジさんがいつも身に付けていられるようにと、ペンダントトップまでが収められていた。そして、カードにはこう書かれていたという。
〈この日が来た時のため、あなたにアリバイの思い出を形に残すため、アリバイの毛を取っておいたの。あなたはアリバイと永遠に一緒にいられることでしょう。アリバイの人生の一部に私を加えてくれてありがとう。アリバイに会えなくて寂しいわ…〉
ペイジさんはこの感動とトリマー女性への感謝の思いを込め、一連の経緯をTikTokに動画で投稿。するとこの動画が全米で大きな話題となり、数々のニュース番組で紹介されることに。
「Newsweek」誌の取材に答えたペイジさんは、
「アリバイはトリマーさんにグルーミングで毛を乾かしてもらう時、彼女にいつも擦り寄っていたほど懐いていたの。きっと彼女は、アリバイがいつか虹の橋を渡ることを知っていたんでしょう。言葉にできないくらい、感謝の気持ちでいっぱいよ」
この「サプライズギフト」の物語で、まさに全米は感動に包まれたのだった。
(灯倫太郎)