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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「対抗戦の流れを変えたG馬場三回忌追善興行」

 2000年6月の三沢光晴らの大量離脱によって、所属選手が川田利明と渕正信の2人になってしまった全日本プロレス。それでも馬場元子オーナーが看板を下ろさなかったのは「馬場さんの三回忌までは」という意地だった。

 その後、天龍源一郎の10年ぶりの復帰、新日本プロレスとの対抗戦などで息を吹き返し、9月30日にキャピトル東急ホテル(現ザ・キャピトルホテル東急)でジャイアント馬場デビュー40周年記念パーティーを開催。その席で翌01年1月28日に東京ドームにおけるジャイアント馬場三回忌追悼興行「王道新世紀2001」を発表した。

 時系列としては、9日後の新日本10.9東京ドームで川田が佐々木健介との頂上決戦に勝利、全日本10.28日本武道館で天龍が川田との王座トーナメント決勝戦を制して第26代三冠ヘビー級王者になった。

 そうした流れを踏まえて年末に発表されたカード第1弾は、メインイベントとして天龍VS川田の三冠戦、馬場三回忌追悼特別試合として大仁田厚&テリー・ファンクVSアブドーラ・ザ・ブッチャー&ジャイアント・キマラ、全日本VS新日本ジュニア対決として渕正信VS獣神サンダー・ライガー、オープニングマッチとして時間差バトルロイヤル。

 85年1月に全日本で引退した後にFMWで一時代を築いた馬場の元付き人・大仁田、8年3カ月ぶりのテリー、5年ぶりのブッチャーの全日本Uターン、そしてあのテリーVSブッチャーの血の抗争が蘇る馬場追悼試合は、馬場・全日本を知る世代のファンにとって魅力的だったはずだ。

 このカード第1弾の発表は新日本1.4東京ドームのIWGP王座決定トーナメントの前で、川田は「インパクトをつけて万全にしたいから、IWGPを獲った上で天龍さんとぶつかりたい」と三冠VSIWGPのダブルタイトル戦をぶち上げた。

 だが1.4東京ドームは、トーナメント決勝の王座決定戦で健介が川田に雪辱。天龍と川田のダブルタイトル戦は流れてしまった。

 ここで新たなメインカードが水面下で検討される。勝った健介が「馬場さんの三回忌では川田と組んでもいい」と言い出し、川田は「負けたまま天龍さんの三冠に挑戦するのもどうかと思う。長州さんともやってみたいし、健介と組んでウチの東京ドームに出てほしい」と発言。そこで浮上したのが天龍&長州VS川田&健介の団体枠を超えた師弟タッグ対決、天龍&川田VS長州&健介の全日本VS新日本の師弟タッグ対決だ。

 いずれにせよ、ポイントは長州が全日本に上がること。長州は85年1月から87年2月までジャパン・プロレスとして全日本に上がっていたが、87年4月に全日本の試合をボイコットして新日本にUターンした過去がある。14年ぶりの全日本登場はインパクト大だ。

 新日本の現場監督として裏で全日本との対抗戦を推進してきた、長州も全日本再登場に乗り気だったが、土壇場でネックになったのが大仁田厚の存在だった。

 前年7月30日、長州は「引退の死に水を‥‥」というつもりで現役復帰して、大仁田との電流爆破マッチを横浜アリーナで敢行したが、その後も大仁田がリングに上がり続けていることに憤って「全日本に上がることには何の抵抗もないが、大仁田と一緒のリングに上がることは御免だ!」と主張。

 最終的に馬場元子オーナーはかつてかわいがっていた大仁田を選択し、長州の出場は実現しなかった。

 1月9日に発表されたメインイベントは天龍&馳浩VS川田&健介。三冠王者の天龍を柱に据え、その横に巧者・馳を置いた。そして川田と健介の初タッグ、かつての馳健コンビが激突するというカードだ。

 さらに第1弾カードに加えて、かつてジャンボ鶴田とシノギを削ったタイガー戸口、ミル・マスカラスの15年ぶりの全日本参戦、前年10月に引退を表明したスタン・ハンセンの引退セレモニー‥‥ジャイアント馬場時代からの歴史を辿るような大会となり、5万8700人の大観衆を動員した。

 そして、この大会で一番大きかったのは、前年はWCW遠征で対抗戦に出ていなかった武藤敬司の全日本初登場。元子オーナーのリクエストで馬場の最後の愛弟子・太陽ケアとシングルで激突したのである。

 試合は武藤が足4の字固めで勝利しているが、実はこの試合で初めてシャイニング・ウィザードを試運転している。

 当初、武藤は「太陽ケア? 知らないよ、そんな選手。メリットもないから嫌だよ」と出場を渋ったというが、いざ試合をしてみたら「いい選手だな。巧いな。これがジャイアント馬場の全日本のプロレスか」と興味を持った。

 そして馬場元子オーナーは武藤に惹かれた。武藤のスケールの大きなアメリカン・スタイルの明るいプロレスに馬場の面影を見たのかもしれない。

 喧嘩モードではなく、自然体で全日本のリングに上がった武藤は、その後の対抗戦の流れを変えていく。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

写真・山内猛

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