もうすぐ冬休みがスタート。クリスマスや正月を地方や海外で過ごしたいというカップルや家族連れで、羽田空港や成田空港などに長蛇の列ができる季節がやってきた。
近年ではペットと一緒にバカンスを、という飼い主が増えているが、日本では国内線、国際線ともペットの機内への持ち込みは禁じられいる。ペットはチェックインカウンターに預け、貨物室に乗せて運ぶ、というルールだ。
とはいえ、海外では機内持ち込みOKという国際線もあるのだが、そんな機内へのペット持ち込みをめぐって騒動が勃発したのが、2019年11月のことだった。
ラトビアからロシア極東ウラジオストクに帰る途中、トランジットでモスクワ空港に降り立ったロシア人男性ミハイル・ガーリンさん。ガーリンさんの飼い猫ビクトルは体重が10キロあり、機内持ち込み上限の8キロを超えていたため、同乗を断られてしまった。
だが怖がりのビクトルを、貨物室でひとりぼっちにはできない。そう考えたガーリンさんはひとまず、同便をキャンセル。その後に「作戦」をひらめき、いったん空港を出てモスクワ市内で「あるもの」を探した。太っちょ猫のビクトルをカモフラージュするため「体重の軽い、似た猫」を見つけ、購入しての「替え玉作戦」だった。
翌日、ガーリンさんはビクトルと「フィービー」と名付けたビクトルそっくりの小柄な猫を連れて空港に戻ると、ビジネスクラスにチェックインすることに成功。
しかし作戦が成功したあまりの嬉しさから、よせばいいのに、シャンパン入りのグラスの向こうでゆったりするビクトルの写真を機内で撮影し、インターネットに投稿。するとこの写真が拡散し、ロシアの愛猫家の間で大きな話題になったのである。
そして壁に耳あり、障子に目あり。世の中、悪いことはできないもので、この写真がアエロフロート関係者の目に触れることになり、事態を重く見た同社はさっそく調査を開始。空港にある監視カメラの解析により、ガーリンさんがビクトルと「体重8キロのフィービー」を入れ替える様子がバッチリ映っていたことが確認された。
同社はこの行為を規約違反とし、言い逃れできない事態に陥ったガーリンさんをマイレージサービスから除外するとともに、これまで溜まっていたマイルを無効にすると決定した。
現地の報道では、ガーリンさんはこの処分により、保有していた40万マイルを全て失ったという。「太っちょ猫」替え玉作戦の代償は大きかったのである。
(灯倫太郎)