1990年に公開され、見る者を恐怖のドン底へと突き落とした米ホラー映画「ガーディアン/森は泣いている」。物語は森のはずれにある広い家に引っ越ししてきた家族に次々と襲いかかる恐怖を描いたものだが、この作品に登場するのが、樹齢数百年という木に宿る悪霊だ。
実は米ニュージャージーには、近づいていたずらでもしようものなら必ず災難に見舞われる、という都市伝説を持つ「呪われた巨木」デビル・ツリーが実在する。
デビル・ツリーは同州バーナーズ郡マーティンズビルにある急流地帯に、1本だけそそり立ったオークの大木で、樹齢はおよそ200年。現在はいたずらを防止するため、周囲には柵が設けられ、触れることができないが、木の側面にはあちこちに切断を試みた痕がある。しかしなぜか、その全てが途中で終わっているのだ。
かつてこの木を切り倒そうとする者は、何人もいたという。ところが彼らは皆、この木に宿る悪霊の祟りにより、危険にさらされたり、行方がわからなくなっているとされる。欧米の超常現象に詳しいオカルト研究家が解説する。
「デビルツリーの代表的な伝説はふた通りあって、ひとつは一家全員を惨殺した農夫が、最後にこの木の枝にロープを括って自死し、その男の呪いが木に乗り移ったというもの。ただ、具体的な名前や時代は判明していません。もうひとつはかなり具体的で、過激な白人至上主義を唱えるアメリカの秘密結社『クー・クラックス・クラン』 (Ku Klux Klan)が、地元に住む黒人やアジア人、ヒスパニック、ユダヤ人など他人種の市民権に異を唱えたことによるもの。彼らを木の前でリンチし、最後はこの木に吊るして殺害したことで、亡くなった人々の怨念がこの木に宿り、近づくもの全てに祟りをもたらす、というわけです」
この団体は1865年に結成され、アダムの子孫で唯一、魂を持つ神による選ばれし民は、プロテスタントのアングロ・サクソン人(WASP)などの北方系の白人のみだと主張。白装束で頭部全体を覆う三角白頭巾を被り、デモ活動を行う。最盛期には600万人を超える会員が在籍し、残虐な行為を繰り返してきたとされる。
そんな伝説を聞きつけ、遠方からも見物客が訪れるようになったようだが、中には写真を撮るだけでは飽き足らず、木に登ったりいたずら書きをしたり、小便をかけたりするなどの不敬を働くものが現れた。チェーンソーを持ち出して切断を試みる輩まで現れる始末だった。
しかし不思議なことに、大木に不敬を働いた者は帰宅途中、車が制御不能になり命の危険にさらされたり、謎の黒塗りのピックアップトラックに執拗に追われ、最後は谷底に突き落とされる、といった恐怖伝説が残されている。
その後、地域の人々により柵が作られ、触れることができなくなったデビル・ツリー。今もこの木にまつわる伝説が、全米を震え上がらせている。
(ジョン・ドゥ)